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「なんだよ母さん!ノックくらいしろ!」
「何言ってんのいつもそんなこと言わないくせに。Aくんキヨの名前が無理言ってごめんね?」
「あっあの、だだいじょぶ、です!」

真っ赤になって首を左右に振るAに、はいジュース、とオレンジジュースが入ったグラスをキヨの母親は差し出した。
キヨも受け取り、一口飲んで数回聞いた疑問をぶつける。

「Aは女だろ、なんでくんなの」
「へ?」
「あっ……あっはははは!」

少し抜けたAの返事と、数秒後の母親の大爆笑。
キヨはちんぷんかんぷんでその光景を見ることになる。

「あ、あの、キヨの名前くん、僕、おとこ、です」
「Aくんものすごい可愛いから女の子に見えちゃうわよね、仕方ないわ母さんも女の子と最初思ったもん」
「かかかわいくない、です」
「ふふふっ…てあれ、キヨの名前?大丈夫?」

Aが、男。
男?
嘘だ、だってこんなに可愛いのに!

「嘘だ!」
「いや嘘ついてどうすんの」
「信じない!」
「ええ……Aくんごめんね、キヨの名前なんだか拗らせちゃったみたい」
「…???」

こじらせる?と意味のわからない言葉に首を傾げて、じゃあ証拠見せろ!!!とキヨはAのズボンを引っ張った。パンツと共に。

そして見える、男としての象徴。


一生守ると描いた未来予想図がガラガラと音を立てて崩れていく。
そのままキヨは目の前が真っ暗になり、気付いた時にはベッドの上で寝ていてAは家に居なかった。



「Aくん落ち込んでたわよ、女の子じゃなかったからもう二度と遊んでもらえないのかなって」
「………」
「ほら謝っといで」

そう、Aは何も悪くない。自分が勝手に勘違いしただけだ。
でも恋になりそうな気持ちを直前に粉々にされた心は簡単には戻らない。
それでも、隣の家の尻を叩かれてAの家までやってきた。
新しく建ったばかりの家は、とても綺麗だ。

「あれ、キヨの名前くん?良かった目が覚めたのね。Aー!キヨの名前くん来てくれたわよー」

インターホンを鳴らした後、Aの母親が出て来て、それからAを呼んでくれた。
正直気まずい。確認するためにちんこ見ちゃったし。とにかく謝らなきゃ。でも気まずいとぐるぐる頭の中で考え込んでいると、目を真っ赤にしたAがとぼとぼと近付いてきた。
泣いてたのだろうか。

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作者名:アフロ田中 | 作成日時:2021年12月1日 4時

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