相対性恋愛禁止論 -1 (sgi) ページ35
恋をしてはいけない相手というものが存在する。
恋をしてはいけない期間というものが存在する。
——是か、否か。
***
私にとって、恋は苦しいものだった。
いや、今も…現在進行形で、苦しんでいるのだけど。
「今日も来てくれてありがとー!」
「また来てねー!」
「ありがとう!ばいばーい!」
色とりどりのライトを浴びたステージから、手を振る。
感謝を口々に告げて、上手からはけると、途端に現実に戻った感じがして毎回寂しくなるのだ。
「今日はチェキ会だから、支度できた子から前出てね!」
袖にいたマネージャーが叫ぶ。
音響で少し耳がやられているので、その位叫ばれないと我々には聞こえないからだ。
私は、ステージの疲れも忘れてぱぱっとメイクと髪を直し、前に駆けていく。
今日は彼が来てたから、早くはやくと心が焦ってしまう。
***
表に出ると、ファンの人たちがそれぞれ並んで待ってくれている。
「Aちゃん、お疲れさまー!」
「今日も良かったよ!」
「ありがとうございます!」
口々に言われる感想に対応しつつも、つい、身長の高いその人に目がいく。
そっと見たはずなのに、彼としっかり目が合う。
その人はひらひらと軽く手を振ってくれていて、つい顔がにやけてしまうのを自覚した。
アイドルとして——いや、本当は声優としてなのだけど——仕事をしているのに、こんな気持ちになるのはプロ失格だ。
それから数人とチェキを撮ったりお話したりして、ついに彼の番になった。
すぅ、と軽く深呼吸して、仕事の気持ちにきちんと切り替える。
「…こんにちは!今日も来てくれてありがとうございます、須貝さん!」
明るく挨拶して、軽くハイタッチする。
彼、須貝さんは割と古参のファンとして、私たちを応援してくれている。
3人組の声優ユニットとして2年程活動しているのだが、初期のファン数人程度の状態から知ってくれている貴重なファンの内の一人なのだ。
ファンとして、応援してくれているのに、いつの間にか好きになってしまった。
アイドルと、ファン。この関係で、恋愛なんて出来るわけもないのに。
恋愛ソングを歌う度、胸が締め付けられて、苦しい。
他に応援してくれている人を裏切っているようで、頭の中で違う私が「アイドル、向いてないよ」って囁いてくるんだ。
元々、性別や種別を超えて演技ができる、声優という仕事に憧れてこの業界に入ったのに、って。
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とき - 許可ありがとうございます…!!(;;* そこは細心の注意を払うつもりです…!!*♪ わわっ!!本当ですか?!!?頑張って描かねば…!!笑 完成したらまたコメントさせていただきますね~!! (2020年11月8日 1時) (レス) id: 37eaeaf46c (このIDを非表示/違反報告)
猫(プロフ) - ときさん、コメントありがとうございます〜!たくさん読んで頂けて幸せ者です!イラストに関しては大丈夫なのですが、本人様たちの目に触れぬよう、ナマモノのご注意だけして頂ければ幸いです。出来たら拝見しに伺いますね♪ (2020年10月29日 23時) (レス) id: 0441fb0038 (このIDを非表示/違反報告)
とき - 話は変わるのですが…この短編集の好きなシーンを描いてもよろしいでしょうか…?(個人で楽しむだけです)一応ツイッターで Fischers_48fam で検索していただくと、どんな絵柄かは見れるので…!!判断基準にして下さい…!(断っていただいても全然大丈夫です!!◎) (2020年10月29日 2時) (レス) id: 0745fc6427 (このIDを非表示/違反報告)
とき - 猫さんの他の作品も楽しく読ませていただきました…!!♪*どの作品もとっても素敵でした~!!!!(全て3周はしました…)← でも一番はこれでしたね…!!笑 心臓抉られ度合いがダントツでした…!!笑 素敵な作品を産み出して下さって本当にありがとうございます…!!* (2020年10月29日 1時) (レス) id: 0745fc6427 (このIDを非表示/違反報告)
猫(プロフ) - ときさん、またしても嬉しいコメントありがとうございますー!心臓抉られてしまった…!たいへん!続きもぼちぼち更新しますのでよろしくお願いします! (2020年10月18日 16時) (レス) id: 0441fb0038 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:猫 | 作成日時:2020年9月10日 17時