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「はい、…え」
「…やあやあ」
そこには、挨拶をする手のまま、私の顔を見て一瞬固まった颯くんがいた。
宙に浮いた手を軽く振って一応普段の様子に戻ったようだったけれど、彼も動揺したらしい。
「どした?珍しいじゃん、泣いてるの」
するっと上げた手を私の頬に滑らせて、優しく涙のかけらを拭う颯くん。
その暖かさに、また泣けてきてしまった。
「う、うう…颯くんのばか…」
「え?俺のせい?なんでなんで?」
そのまま彼の胸に寄りかかって、ぐずぐずと泣く私をあやすように、ぽんぽんと頭を撫でてくれる手が心地良い。
普段はあまり甘やかしてくれないので、不幸中の幸いだなあと彼の匂いをすんすんと嗅ぎながら(変態だ)堪能する。
ある程度して落ち着いた頃に、とりあえず中に入ってもらおうと家に招いて、荷物を先に片付けるんだったと後悔した。
休み前でもないのに教科書をたくさん持ち帰っていることと、汚れたジャージの袋を目敏く見つけた颯くんは、静かに詰め寄ってくる。
「A?何があったの」
「なに、も」
「なくないでしょ。何、これ」
「……」
背中側にはドアがあって、これ以上後ろに下がれない。
ドアと颯くんに挟まれて、身動きが取れない状況で彼に身体を固定されてしまった。
どうにかして抜け出そうとするが、颯くんの手が際どいところを撫でて力が抜ける。
「白状しないと、壊しちゃうけど、いい?」
「ひいいい言います言いますごめんなさいいい」
颯くんは可愛い顔して、体力オバケだ。彼の思うままにされたら明日は立てない。
…アッサリ観念した私は、前回のことも含めて颯くんに話す羽目になった。
彼のせい、とまではいかないが一因を担っていたということもあって表情は明るくない。
「想像よりも…だなあ」
「…?颯く、」
「A」
「…な、なに?」
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とき - 許可ありがとうございます…!!(;;* そこは細心の注意を払うつもりです…!!*♪ わわっ!!本当ですか?!!?頑張って描かねば…!!笑 完成したらまたコメントさせていただきますね~!! (2020年11月8日 1時) (レス) id: 37eaeaf46c (このIDを非表示/違反報告)
猫(プロフ) - ときさん、コメントありがとうございます〜!たくさん読んで頂けて幸せ者です!イラストに関しては大丈夫なのですが、本人様たちの目に触れぬよう、ナマモノのご注意だけして頂ければ幸いです。出来たら拝見しに伺いますね♪ (2020年10月29日 23時) (レス) id: 0441fb0038 (このIDを非表示/違反報告)
とき - 話は変わるのですが…この短編集の好きなシーンを描いてもよろしいでしょうか…?(個人で楽しむだけです)一応ツイッターで Fischers_48fam で検索していただくと、どんな絵柄かは見れるので…!!判断基準にして下さい…!(断っていただいても全然大丈夫です!!◎) (2020年10月29日 2時) (レス) id: 0745fc6427 (このIDを非表示/違反報告)
とき - 猫さんの他の作品も楽しく読ませていただきました…!!♪*どの作品もとっても素敵でした~!!!!(全て3周はしました…)← でも一番はこれでしたね…!!笑 心臓抉られ度合いがダントツでした…!!笑 素敵な作品を産み出して下さって本当にありがとうございます…!!* (2020年10月29日 1時) (レス) id: 0745fc6427 (このIDを非表示/違反報告)
猫(プロフ) - ときさん、またしても嬉しいコメントありがとうございますー!心臓抉られてしまった…!たいへん!続きもぼちぼち更新しますのでよろしくお願いします! (2020年10月18日 16時) (レス) id: 0441fb0038 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:猫 | 作成日時:2020年9月10日 17時