水の上に立つガーディアン -1 (mzkm) ページ24
「そんな怒らないでよ」
「……」
「ねーえ、ってばー」
駅までの道を一緒に歩きながら、隣で私の機嫌を伺っているのは、彼氏であるところの颯くんだ。
いつもより早めに歩いても、彼はひょこひょこと難無くついてくる。
ある程度、高校から離れたなと思ったところで、一時停止。
「うわ、っと」
「あのね、颯くん、私は怒ってるんじゃないの」
私がいきなり止まったことによって彼は二、三歩進んでしまったが、そのまま振り返る。
軽く腕を組んで、理系の彼をどうやって納得させるか逡巡するけれど、中々良い言葉が思い浮かばない。
――ああ、面倒だな、女子って。
「迎えに来てくれるのは、すごく嬉しい。けどね、高校の前までは来ないでほしい…って、前にも言ったよね?」
「うん、まあ。でもたまには良くない?」
「良くないんだって。颯くんは自分の人気舐めてるの?」
「…褒められてる?」
「褒めてない!」
颯くんはいつも飄々としている。
口数は割と多いけれど、内に秘めた思いみたいなものが、見えにくいのだ。
はあ、とため息を吐いて、私は颯くんに再度お願いをする。
「とにかく、お願い。校門の前で待ってるのは、止めて欲しい」
「んー」
コテン、と可愛らしく首を傾げた颯くんは、少し考えた風だったが、「ま。わかった」と了承してくれた。
その後は普通に彼の部屋まで行って、夕ご飯を食べたり勉強をしたりして過ごしてから、私は自宅へ帰宅したのだった。
***
次の日、登校して下駄箱を開けると、想像通り上履きがなくなっていた。
早めに来たつもりだったが、昨日のうちにやられたのかもしれない。
頭を抑える。幼稚か。幼稚なのか。
誰がやったのかはこの際置いておいて、職員室にスリッパを借りに行く。
「あの、スリッパ貸してもらえますか」
「…ああ、そこにあるから、貸し出し票だけ書いといて」
生徒が上履きをなくしているという事情を特に深掘りもせずに、そこにいた先生は適当に答えた。
――本当、颯くんの言う通りだったな。
「Aにはその高校合わないと思う」ってボソッと呟いたあの言葉、もっと間に受けていればよかった。
制服が可愛いのと家から近いという理由だけで受けたこの女子高は、私の本来の偏差値より大分低いのだ。
周りの友達も、先生も、何もかもが合わなくて辛い。
颯くんの通うあの大学どころか、MARTHすら受けるような生徒は誰一人いないのだから。
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とき - 許可ありがとうございます…!!(;;* そこは細心の注意を払うつもりです…!!*♪ わわっ!!本当ですか?!!?頑張って描かねば…!!笑 完成したらまたコメントさせていただきますね~!! (2020年11月8日 1時) (レス) id: 37eaeaf46c (このIDを非表示/違反報告)
猫(プロフ) - ときさん、コメントありがとうございます〜!たくさん読んで頂けて幸せ者です!イラストに関しては大丈夫なのですが、本人様たちの目に触れぬよう、ナマモノのご注意だけして頂ければ幸いです。出来たら拝見しに伺いますね♪ (2020年10月29日 23時) (レス) id: 0441fb0038 (このIDを非表示/違反報告)
とき - 話は変わるのですが…この短編集の好きなシーンを描いてもよろしいでしょうか…?(個人で楽しむだけです)一応ツイッターで Fischers_48fam で検索していただくと、どんな絵柄かは見れるので…!!判断基準にして下さい…!(断っていただいても全然大丈夫です!!◎) (2020年10月29日 2時) (レス) id: 0745fc6427 (このIDを非表示/違反報告)
とき - 猫さんの他の作品も楽しく読ませていただきました…!!♪*どの作品もとっても素敵でした~!!!!(全て3周はしました…)← でも一番はこれでしたね…!!笑 心臓抉られ度合いがダントツでした…!!笑 素敵な作品を産み出して下さって本当にありがとうございます…!!* (2020年10月29日 1時) (レス) id: 0745fc6427 (このIDを非表示/違反報告)
猫(プロフ) - ときさん、またしても嬉しいコメントありがとうございますー!心臓抉られてしまった…!たいへん!続きもぼちぼち更新しますのでよろしくお願いします! (2020年10月18日 16時) (レス) id: 0441fb0038 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:猫 | 作成日時:2020年9月10日 17時