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邂逅、そして。-6 ページ10

収録までやることがないため、持参した本を斜め読みしていたところ、
ガチャリ、とドアの開く音がしてそちらへ目をやる。

「お疲れさまでーす」

涼しい空気が逃げないようにと素早くドアを閉める動作とは裏腹に、その声はのんびり響いた。
弟が関わっているから、と見ていたQuizKnockの面々は、実際には顔を合わせたことがないという緊張感があったのだが、彼は違う。

「水上、」

また同じ過ちを犯しそうになったが、すんでのところで踏みとどまる。
こちらの声に反応して手を軽くあげると、近くまで歩みを進めてくる水上くん。
前から思っていたけど、彼の名は体を現しすぎている。爽やかな青年になったなあ。

「お疲れ、珍しいね。オフィスに来るの」

私が声をかけるより早く、隣に座っていた福良さんが水上くんに話かけた。
いつの間にかイヤホンは彼の耳からいなくなっていたようだ。

「いやあ、ちょっとこいつに用があって」

水上くんは「あー、涼しいなー、ここー」と机にぺたりと腕をつけて猫のように伸びると、そのままの体勢で私へと顔を向ける。
それを悟りつつ、今手に持っていた本を彼へ差し出した。

「はい、2巻目」
「さんきゅ。こっち返すわ」

中々の重みがある本を交換していると、横にいた福良さんが面白そうに声をかけてくる。

「あ、それ。面白いよね。特に最後のトリックが」
「ちょっと、福良さん。何サラッとネタバレしようとしてるんすか」

水上くんが慌てて福良さんの言葉を遮る。
この本は続きもののミステリーで、1巻完結のストーリーだ。
しかも、奇抜なトリックが肝と言ってもいい作風である。
私も、以前に弟が読み終わったタイミングで貸してもらい読んだことがあるため、福良さんの物言いに笑いそうになる。
っと、だめだ。口角を上げないように、多少不自然になったが頬を軽く擦ってごまかす。

…一人で、笑ってはいけない何かをやっている気分になってきた。

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作者名: | 作成日時:2020年8月14日 20時

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