【QK】君の世界、私の世界 (ページ7)

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邂逅、そして。-3 ページ7

中の間取りもある程度は聞いていたので、普段はこの辺りにいる、と言われた場所を目指して歩みを進める。

すると、そこには先客の姿があった。
作業中のようだったが、そろそろと近付くと気配を察したのかパソコンの画面から顔を上げる。

「お疲れ様です…福良さん」
「うん、お疲れ。外暑かったでしょ」

眼鏡のふちを軽くあげながら、挨拶を返してくれる福良さん。

弟曰く、彼が教育係的な立ち位置で色々教えてくれたらしく、一番親しい先輩だという。
ということは、一番怪しまれる可能性が高いということでもあり…加えて、彼の察しの良さは恐れるべきものである。

ここまで来ておいてなんだが、この席には座りたくない。
簡単にボロが出る気がする。

「…A？座んないの？」

一瞬の迷いも拾われて、萎縮しないでもいいところで少し怯む。
悪いことをしている気分になってしまう…言うなれば、私は部外者であるのだから。

「ええと…飲み物、取ってきます」

苦し紛れに出た言葉も、彼には少し引っ掛かったようだが―逃げるように、キッチンへと向かった。

＊＊＊

冷蔵庫の中には、弟が前に置いて帰ったという飲み物が入っていた。
きちんと名前が記載されているので取り違えはないだろう。
問題は、ブラックコーヒーであることくらいなのだが…。

「(喉が渇いていることに、違いはないんだよね…)」

誰もいないことを良いことに、手の中でペットボトルをくるくると弄ぶ。
戻りたくないなーという気持ちがコーヒーと共に揺れた。

まあ、苦いけれど、飲めないわけではない。

いよいよ戻らないのもいけないと思い後ろを振り返ると、壁にもたれた河村さんの姿があった。