検索窓
今日:8 hit、昨日:2 hit、合計:21,261 hit

閑話休題、熱をあげる-3 ページ39

聞くとAの家は俺の家とオフィスの間くらいにあったので、今日はそのまま帰宅することにして、オフィスも無人になるため施錠する。

カチャン、と錠の落ちる音が静かな廊下に落ちた。
隣で一緒に外に出たAは、相変わらず浮かない顔をしている。
一度不用意な発言をしているので、(たかが風邪だ)とも言えず、ぽんぽん、と広い背中を鼓舞するように叩く。

「大丈夫、大丈夫」

何の根拠のない言葉だったけれど、彼は「はい」と小さく返事をして、再度頭を下げた。

「よろしくお願いします」
「うん、任せて」

大切な家族なんだなあ、と、自らはたまにしか帰れない故郷を思い返しながら―Aの家へと向かうのだった。


***


Aの地図と分かりやすい補足説明があったので、少々入り組んでいたが迷わずに家までは辿り着けた。
一応、とインターホンを鳴らして様子を伺ってみるが、誰も出てくる気配はない。
預かっていた鍵で玄関へと入る。ポタポタと水が滴る傘をシューズボックスに立てかけて、靴を脱いだ。

「おじゃましまーす…」

起こしていいのか判断に迷い、中途半端な声量で静かな空間に挨拶をする。
当たり前だが、誰からの返事もなかった。

そのまま廊下を抜けて、リビングに持参したものを置く。キレイに整頓された家だ。

部屋の換気もしようと窓に近付いたところで、奥に配置された仏壇に目が留まる。
制服姿の子供が二人と、大人が二人。皆、幸せそうに笑っている家族写真だ。まだ幼い顔をしているが、この男の子がAだろう。

今、無表情な彼しか知らない俺にはその写真が酷く悲しく見えた。
軽く手を合わせて、カーテンと窓を雨が入らない程度に開ける。

―と、奥の部屋からドタン!と何かが落ちたような音が聞こえて心臓が跳ねた。

な、何事?

閑話休題、熱をあげる-4→←閑話休題、熱をあげる-2



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.1/10 (33 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
74人がお気に入り
設定タグ:QuizKnock , QK , クイズノック
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名: | 作成日時:2020年8月14日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。