閑話休題、友情の始まり?-6 ページ26
止まったというよりは、既に目的地に着いていたのと同時だったというべきだが。
いや―そうじゃなくて、もっと重要なことがある。
いま、何て言った?
「誕生、日?」
「う、うん…今日、あの子の誕生日だからご飯たくさん作って…って、もしかして聞いてない?」
目を丸くして尋ねてくるので、苦々しく頷いた。あいつ…。
「プレゼントとか、ないんすけど…」
本当に一ミリもそんなそぶりがなかったので、手元にはせめてもの手土産として持参したジュースとお茶しかない。
そんな俺に、あはは、と笑いながら鍵を取り出す彼女。
「全然、気にしなくていいよ。来てくれるのがもう既にプレゼントだもん」
くすくす、おかしそうに笑い続けて、あの子らしい…と微笑む姿が、夕日に反射して―瞬間、泣いているようにも見えた。
ハッと瞬く間に、もうドアが開いていて、そこには「どうぞ、綺麗じゃないけど…」と笑う彼女がいた。
この姉弟は、感情を逆の表情で隠しているのか。
たとえそれに気付いても、今の俺には特段出来ることはないんだけれど。
その日ささやかに行われた誕生日会でも、彼が笑うことはなく、それを補うかのように彼女はずっと微笑んでいた。
俺は、なんて不思議で、儚い二人なんだろうと思って―ただ、惹かれたんだ、どうしようもなく。
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作者名:猫 | 作成日時:2020年8月14日 20時