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閑話休題、友情の始まり?-4 ページ24

連絡をとるために、と初めてアドレスを交換する。
赤外線通信。
そこで初めて、こいつの名前は漢字で書くとこうなのか、と知ることになる。

そしてAは飄々と、殺し文句を並べるのだ。


「へえ。水上って名前もさわやかなんだな。知的でもあるし…名は体を表すって感じ」

「…どーも」


なんで男に口説かれてるんだ…と思いつつも悪い気はしない。

首筋をぽりぽりかく仕草で、俺の照れは伝わったらしく、Aも心なしか笑っているように見えた。

―友人という概念は、歳をとるにつれ難しくなっていくもの、だと思う。

けれど、この時の俺はたしかに、Aと友人になれたのだなあと、くすぐったい気持ちになったのを、今でも覚えている。



***



土曜の夕方。

予定を終わらせた俺は道の真ん中で、携帯と向き合っていた。

その当時、上京したばかりで地理に疎く、おまけに携帯の機能も発展途上だったから、道に迷っていたのだ。

この辺りは住宅街で、特に目立つ目印もない。

さすがにAに連絡するか…と、通話ボタンを押した時だった。


「あの…水上、くん?」


後ろから、戸惑いがちに声をかけられた。
耳に携帯を当てながら、振り返る。


「あ!電話、わああ、ごめん」と慌てて手をブンブン振っている女性がそこにはいた。


こちらから電話を掛けた手前、すぐ切るわけにもいかず、目の前の女性には片手をあげて謝罪を伝える。

2コール目で、Aの声が通話口から聞こえた。

「もしもし、水上?今どこ?」

「それがー、わかんなくてさ。近くまで来たと思うんだけど…」

「今さっき姉さんが出てったから、側にいたら分かるかもしれない―」


Aの言葉を最後まで聞かずして、理解する。
今ここで終話を待ってそわそわしている女性が、Aの姉か。


「あー、ちょうど今、会ったわ。おー…じゃあ、あとで」


電話を早々に切り上げて、改めてAのお姉さんと向かい合う。


「すいません、待たせて…はじめまして、水上です」

「あ、ううん!私もタイミング悪くてごめんね?はじめまして、」


にこやかに笑うAのお姉さんは、簡単な挨拶と自分の名前を名乗ると、「行こっかー」と上機嫌に道案内を始めた。


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作者名: | 作成日時:2020年8月14日 20時

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