検索窓
今日:1 hit、昨日:2 hit、合計:21,254 hit

閑話休題、友情の始まり?-3 ページ23


「―だから、医者?」

「…人は、必ず死ぬからね」

「まあ、仕事として安定はしてるよなあ…」


Aが読む本は、基本的には日本文学、たまにミステリー、そして医学書だった。
単に医学に興味があるのかと思えば、医学部を目指しているというので驚いた。

俺の動機とは大分違うが、直近の目指す場所は同じらしい。

「医学が普通に面白いっていうのもあるけど」

彼の物言いだと、医者としての使命に燃えているというわけではないようだが―何故か誰よりも向いているようにさえ感じる。


「俺のにーちゃんより本読んでるしなあ…」


兄も医師を目指すものとしてこの年まで一緒に育ったが、彼はAほど本の虫ではなかった。
まあ、本をたくさん読んでいたらいいという訳でもないと思うけれど。


その言葉に、少し考えるしぐさを見せるA。
彼にしては珍しく、言葉に詰まっている様子である。

少し待ったが、空中を浮遊する目線は降りてこない。何か、言いにくいことがあるようだ。


「…なんだよ」


しびれを切らして軽く問いかけると、トン、と指先で机を叩いて自分を鼓舞するように、けれど静かに、彼は言う。


「いや…水上、今週の土曜って…時間ある?」

「は」


思いもよらぬ言葉に、まぬけな音が口から漏れた。
まさか、こいつから週末の予定を聞かれるとは。


ぽかんとした顔の俺と、居心地が悪そうに姿勢を直すA。

図書室という場所も相まって、二人の間にガチの静寂が訪れた。…今、天使通ったな。


変な思考回路になりそうなところを慌てて戻して、回答のために自身のスケジュールを思い出す。
土曜日…土曜か。


「土曜は夕方からなら空いてる、けど」


空いていれば何なのか、今の会話の流れからだと全く汲み取れない。

そう答えた俺の言葉に少し安心した様子のAは、「嫌じゃなければでいい」と前置いた上で、家に遊びに来ないか、と誘ってきた。

なんでもAの姉が久しぶりの休みでご飯を作ってくれる、らしい。


なるほど、兄弟の話題繋がりだったのか。
突拍子もなく話題が変わる人間ではないと思っていたが、思わぬ経路だった。


「ええ、姉弟水入らずなんじゃないんすか」


少し茶化してみるが、これは特に気にされなかったようで、淡々と「別に」と返されて肩透かしを食らった俺である。

おもしろくねー、と悪態付きながらも、誘いは二つ返事で了承した。

閑話休題、友情の始まり?-4→←閑話休題、友情の始まり?-2



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.1/10 (33 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
74人がお気に入り
設定タグ:QuizKnock , QK , クイズノック
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名: | 作成日時:2020年8月14日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。