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閑話休題、友情の始まり?-1 ページ21

(side mzkm)

俺が開成に入ったのは、親の勧めだった。


クイズが強いんだよなあというぼんやりした印象だったけれど、入ってみたらやたら体育会で、とんでもねーとこに来たなと少しビビったり。


…そして男子校は、色々とうるさい。

俺はするりと教室から抜けて、静かな場所を求め図書室へと向かった。

既に何度か利用しているのである程度の配置はわかっており、一番人のいない―静かそうな場所へ足を運ぶと、一人先客がいた。


そいつは、背筋がスッと伸びていて、座っていても長身なのが分かる。
…なんというか、骨格が綺麗だ。
はらりと動くページの音で、ハッと我に返る。
つい見惚れて…いや、見つめていたようだ。

中性的なそいつは、顔立ちからは同級生とも先輩とも分からなかった。
俺は高校編入組だから、そもそも内部組とはクラスが違う。
同学年だったとしても何百人いる中の一人なんて覚えようがないのだ。

そんなことを取り止めもなく思っていたら、ふいにそいつが顔を上げて俺の存在に気付く。

真っ黒の瞳。
―なんでだろうか、俺はその色に、どうしようもない悲しみと…孤独を感じたんだ。

「…太宰?」

なんとなく目を見ていられなくて視線を滑らすと、そいつが開いていた本に至る。
その表紙にはたしかに見覚えがあった。

声をかけられたことが想定外だというような顔をしながら、そいつは軽く頷く。

「文章が、綺麗だよね」

何の機微もなく、本当にそう思ってんのか?と疑うくらいにー無表情に、言う。
そしてまた、顔色を変えずに呟きながら、ぐるりと長い腕を回した。

「ずっと同じ体勢でいると、疲れる…」
「…背筋伸ばしすぎなんじゃない?」

それが俺らの―Aとの、初めての会話だった。

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作者名: | 作成日時:2020年8月14日 20時

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