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邂逅、そして。-12 ページ16

「A、どうした?」

それだけで、(ああ、私も参加した方が良かったんですね!)と察したのは社会人としての経験ゆえだろう。
福良さんがチラリとこちらの様子を伺ってから、伊沢くんへと声をかけた。

「ちょっと調子悪いんだって」
「まじ?大丈夫なの」

キランと目を光らせたような伊沢くんの目線が痛い。
彼は指揮者として、一定の責任感があるのだ。
いらぬ心配をかけてしまったことによる罪悪感で心が冷える。

「あ、大丈夫です。心配かけてすみません…」

あまり真っ直ぐと向き合えない私に、伊沢くんは目を細めた。

「なに、なんかしおらしいな。そっちのが心配になるわ」

こちらが気に病まないためだろう、軽く笑いながら返してくる彼は本当にコミュニケーションに長けていると感じた。
若い頃から様々な人と関わってきた伊沢くんは人一倍、機微に敏感なのだろう。

この話は終わりと言わんばかりに早々と会議の内容に入るので、慌てて近寄って空いていた席ー須貝さんと福良さんの間ーにつく。

促されるままに参加したはいいものの、全くと言って良いほど私の出る幕はない。
彼らの頭脳を持ってすれば、最適解は最短で導かれるのだから。
ただ、ぼうっと聞くわけにもいかないので一応自分なりの意見を持って話は聞く。
先ほどはいきなり話を振られて困ったわけなので、同じ失敗はしないように。

「ーっていう感じで、どう?」

意見が概ねまとまったようだ。伊沢くんがぐるりと皆を見回す。
私の周りは各々、賛成の雰囲気で頷いたり、その旨を声で表している。
…けれど。

「…A?何か気になる?」

伊沢くんが私の表情に引っ掛かりを感じたらしい。
それもそのはず。今まとまりかけた意見には、私的に同意しかねる部分があったのだ。
ファンとしての視点か、はたまた異性的な視点かは分からないけれど、多分この場の総意とは異なるものが。

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作者名: | 作成日時:2020年8月14日 20時

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