邂逅、そして。-11 ページ15
「僕もそれ思いました。Aさん、いつもめっちゃ字綺麗だなーって思ってたから、今日どうしたんだろって」
QuizKnockの中でも、字が上手いことで有名な二人がちょうど収録に参加していたことが不幸だったのか、はたまた。
すっかり困ってしまって、目をウロウロさせる。うーん、どうしよう…。
ーすると、素晴らしいタイミングで救いのインターホンが鳴った。
「伊沢かな?」
少し離れたところで次の企画について話し合っていた福良さんと河村さんが、どちらともなく指摘して頷く。
俺が一番近いから、と須貝さんがドアを開けに行くのを見やり、息を吐く。
問い詰められていたような空気が少し霧散したように感じたので、口を開いた。
「ーごめん、次はもっと見やすく書くから」
特に何とは言及せずに、謝罪だけ述べておく。
「おつかれー。悪い、遅れた」
私の言葉にあまり納得していないような顔の三人だったが、ドアが開いて入ってきた伊沢くんの登場により、意識が逸れたようだ。ありがとう、伊沢くん…。
「お疲れ。今さっき、伊沢抜きの企画終わったところだけど、どうする?」
「ん。そしたら先にいっこ会議していい?確認したいことがある」
今の収録状況を福良さんから聞いて、スピード感のある回答をする伊沢くんは、リーダー然としていてかっこいい。
彼ー伊沢くんのことは、水上くんから少しだけ、本当に噂程度に聞いていて、高校生時代から存在を知ってはいた。
こんなに有名になるとは、最初に彼が「くそうるせー先輩がいるんすよ」と言っていた頃には想像もしていなかったが。
実際に会うのはこれが初めてとなるのだが、なんだか有名人に会えた気になって少し心が弾むところである。
散らばっていたメンバーが机の周辺に集まり始め、会議をするようだが、私はといえば所在がない。
水上くんはまた本の世界へ旅立ってしまったし、川上くんと山本くんは机の方へと移動してしまった。
弟は、主に手伝いだけだと言っていたから…会議には進んで参加はしていなかったのだろうか?
初動が遅れてぼんやりしているように見えたのだろうか、伊沢くんがこちらを見やって不思議そうに問いかけてきた。
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作者名:猫 | 作成日時:2020年8月14日 20時