flower 谷裂 ページ8
ーーーねえ、谷裂知らない?
ーーー1時間くらい前にランニングに行くって言ったきり帰ってこないよ
ーーーえ?…いくらなんでも帰ってきてるよね?
ーーーどうだろう、最近ランニングから帰ってくるの遅いから…
「あ、谷裂さん!今日も来てくれたんですか?」
こちらに気づいたAが手を振ってくる。Aと出会ったのは、いつだかのランニング中。たまたま彼女が花の世話をしているところを見つけ、その横顔になんとなく惹かれた俺は声をかけてみた。すると、話しやすく、なぜか落ち着くため、彼女の元へ寄るのが日課となっていた。俺は人間と違い、感情が薄いはずなのに、こんな気持ちを抱くとはそれほど想いが強いということなのだろう。
「ああ。…邪魔したか?」
「いいえ!邪魔じゃないです、嬉しいです」
そう言ってふにゃりと笑うAに見とれてしまう。もう何度も見ているはずのこの笑顔には、いつまでたっても慣れる気配がない。
「今日も花の世話か」
「はい!少しでもこの子達を見ていたいんです」
愛おしそうに自分で育てた花を見つめるA。とても女性らしく、綺麗という言葉では収まらない気がする。そんな彼女に俺はしばらく見惚れていた。
数分後、Aが突然、そうだ!と言って立ち上がった。
「谷裂さん、渡したいものがあるのでちょっと待っててくれませんか?」
「ああ、わかった。さっさと行ってこい」
「はい!」
元気のいい返事をしてAは走って行った。
数分後、彼女が赤い花束を両手で抱えて戻ってきた。
「これはチューリップか」
「はい!ぜひ谷裂さんに受け取って欲しくて」
迷惑でしたか、と不安そうに聞いてくる彼女に首を横に振ってやればまたいつもの明るい笑顔に戻った。
「それが、私の気持ちです!」
そう言った彼女の顔はほんのりと色づいているような気がした。
館への帰り、佐疫が教えてくれたのだが、赤いチューリップの花言葉の中に、愛の告白があるらしい。それを聞いた俺は一気に顔が赤くなって笑われた。
後日、佐疫に協力してもらい、俺はAにブーゲンビリアを渡した。自惚れではと不安もあったが、受け取った彼女は今までで1番かわいい笑顔で言った。
「私、今が1番幸せです!」
花言葉は、あなたしか見えない。
【後書き】
谷裂さんは純情派だったらいいな(願望)
よくあるネタですが、こういうの結構好きです。
169人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みみみかん(プロフ) - とても面白いです!ありがとう・・・ありがとう・・・(泣)続きまってます!! (2020年11月13日 18時) (レス) id: acd4260d4c (このIDを非表示/違反報告)
yakisoba2710(プロフ) - 面白すぎてヤバイ 続きがすごく気になります!!!これからも頑張ってください!!!! 後、佐疫くん推しですよねー可愛いしマイエンジェル (2018年7月26日 0時) (レス) id: 7b84a70bb8 (このIDを非表示/違反報告)
ねむねむ - こっこれは面白い!面白しろすぎます!!!! (2018年3月25日 21時) (レス) id: 7ee805d977 (このIDを非表示/違反報告)
ハル - まってました(((o(*゚▽゚*)o))) (2018年3月17日 10時) (レス) id: a2ed5d3f64 (このIDを非表示/違反報告)
真顔の天使 - 面白かったです。が、佐疫君は「僕」ではなく「俺」ですね笑笑 (2018年3月14日 21時) (レス) id: 34e63f959e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:田植えの四郎 | 作成日時:2015年3月5日 21時