もう一歩 (ページ10)

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過去編９ページ10

河原についてからもしばらく沈黙が続いた。

村咲さんの腕を掴んでいたのは誰だったのか。

同じ家ということは父親…？それとも親戚…？

年の離れた兄という路線も…

色々な事が頭をめぐらせている内に

ふと、彼女が落とした髪飾りのことを思い出した。

｢これ…村咲さんが落としたのを見たんだ。

声をかけたんだが、聞こえていない様子で

届けようとしたら遭遇したんだ。

理由はどうであれ

尾行するような形になってすまない。

ただ、俺が見かけた村咲さんは大学とは

別人のようだった。

俺でよければその悩み、話してくれないか？｣

2度目の沈黙。

だが今回は彼女がそれを破った。

｢…このことは

紬さんに言わないと…約束してくれますか…？｣

今にも消えてしまいそうなほど繊細な声だった。

｢あぁ、わかった。約束する。｣

彼女は、なにかに怯えるように

おそるおそる話し始めた。