85 ページ39
新学期。
「ハルちゃん、おはよう！」
「ハル、退院できたんだ」
「おはようございます、ハルちゃん」
寮の前へと登校してきた葉隠さん達に挨拶する時風。
「おはよう葉隠さん、耳郎さん、八百万さん」
前々から兄さんから聞いていた寮。立派なそれを前に芦戸さんは興奮している。
クラスメイト全員が寮の前に登校してくると、いつの間にか兄さんも皆の前に立っていた。
「とりあえず1年A組、無事にまた集まれて何よりだ」
(やっぱり兄さんも心配してるんだな……)
「皆許可降りたんだな」
「私は苦戦したよ……」
「フツーそうだよね……」
「2人はガスで直接被害遭ったもんね」
葉隠さんのため息が、苦戦した証だろうか。
「ハルもだよね？ガス被害」
「え、そうなの？」
時風は、何故病院のベッドに横になっていたかをあまり覚えていない。
「相澤先生が『ガスを沢山吸い込んだのが原因だ』って言ってたよ」
(……聞いてないぞ)
思わず兄さんの顔を見つめる時風。だが兄さんはどこ吹く風の如く、何も語らない。
「無事集まれたのは先生もよ。会見を見たときは、いなくなってしまうのかと思って悲しかったの」
何も語らない兄さんに蛙吹さんが会見での感想を述べる。麗日さんも同じ意見らしい。
(兄さんはそんな人じゃないし……)
兄さんは少し間を置いて答えている。何か考え事をしているようだ。
「さて……！これから寮について軽く説明するが、その前に1つ」
仕切り直すように手を叩く兄さんは、
「当面は合宿で取る予定だった“仮免”取得に向けて動いていく」
大事な話をしようとする。
忘れていたらしいクラスメイト。無理もない。
そんなクラスメイトの言葉を他所に、兄さんは轟君、切島君、緑谷君、八百万さん、飯田君の名前を呼ぶ。
「この5人は、あの晩あの場所へ爆豪救出に赴いた」
兄さんの言葉に、騒いでいた声も止んで、一気に静まりかえる。
「その様子だと、行く素振りは皆も把握していたワケだ」
時風は近くにいる八百万さんに顔を向ける。視線に気付いた八百万さんと目が合うが、何故か時風は逸らしてしまう。
「オールマイトの引退がなけりゃ俺は、爆豪・耳郎・葉隠・時風以外、全員除籍処分にしている」
兄さん曰く、敵連合の出方が読めない今、雄英から追い出す訳にはいかないらしい。
「正規の手続きを踏み、正規の活躍をして信頼を取り戻してくれるとありがたい」
そういって寮の中へと向かう兄さん。
(行ける雰囲気じゃないよ……)
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 4人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：末崎時野 | 作成日時：2019年6月26日 12時
