79(主人公の夢の中。少々お付き合いください) ページ33
真っ暗闇。
一言で言ったら、それしか出ない。
どこなのだろう。
兄さんは？マンダレイは？
皆は？
私は……？
「兄さん？」
真っ暗闇の中、時風の言葉が嫌に響く。
誰も居ないのだろうか。
何処からか音がして、咄嗟に身構えてしまう時風。
「やぁ、遥、久しぶりだね。先生だよ」
“先生”？
兄さん？ブラドキング？
「覚えてないかい？遥を拾ってあげた先生だよ」
私を拾った？
「拾ってくれたのは兄さんだけ」
断言する時風だが、声の主は笑ってる。
「兄さん？遥には兄さんなんかいないだろう？」
不気味な笑い声が時風の心を刺激する。
「兄さんはいるもん！私の、兄さんだもん！」
「いや、遥には先生とテンちゃんだろう？」
テンちゃん……？
「だれ？“テンちゃん”なんて知らない!!」
叫ぶ時風だが、声の主はそれを咎める。
「駄目じゃないか、テンちゃんを忘れちゃあ」
突如、映像が流れる。
「なに……」
それは、小さな金髪少女。
ボロボロの格好で、体育座りをして影の正体を見上げる。
『僕と一緒に、来るかい？』
『ヒーローが憎いかい？』
それは憎たらしいような、それでいて爽やかにも見える笑顔。
「あ……」
思い出した。
「私、捨てられたんだ……」
思い出してしまった。
「せんせい……テンちゃん……」
思い出されてしまった。
「やっ……やだぁあ!!!」
時風は、親からの虐待を思い出してしまった。
思わずしゃがみこむ時風に、声は容赦なく心を刺激する。
「遥が捨てられたのを、僕が拾ってあげたんだよ？」
聞こえてくる声を振り払おうと、頭を激しく振る。
「僕が親で、テンちゃんは遥のお兄さん代わりだろ？」
「違うっ……」
時風の兄は、たった1人。相澤消太だ。
「私の兄さんは、相澤消太!!テンちゃんの妹じゃない！アンタの子なんかじゃない！」
声の主が笑顔で映ってる。
『これからは、僕についてくるんだよ』
「やめてぇぇえ!!!」
耳を塞ぎ、目を強く瞑る。
『テンちゃん、ハルちゃん』
「呼ぶなっ！そのあだ名は、友達からの呼び名なの！穢らわしい声で呼ぶな!!」
力の限り大きく叫ぶ。
だが、映像は続いて、別の映像が流れる。
『お前はもう、敵だ』
それは、時風が“兄さん”と慕う、相澤消太だった。
「え……」
映像が見上げる時風。
『まさか、敵だったなんて』
『アンタなんか友達じゃない』
見覚えのある制服。
見覚えのあるコスチューム。
『お前はもう、いらない』
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 4人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：末崎時野 | 作成日時：2019年6月26日 12時
