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体の異変の原因は、明らかに毒ガスと肩の傷。休まず動いていることで、体力も削られている。
「もう遥は何もしなくて……あ、ラグドール知らない？」
思い出したかのように尋ねるマンダレイに、時風は息を整えながら聞き返す。
「ラグドール？知らないけど、居ないの？」
辺りをキョロキョロと見渡すが、ラグドールの姿はない。
「いつもはすぐに応答するのに、未だに何も応答がないんだよ」
「……ラグドールって、肝試しのとき何処に居た？」
ラグドールが何処に留まっていたのかを知らない時風は、入ろうとしていた森を見つめる。
「ルートの折り返しになってる広場」
「道通りに行けばそこに行ける？」
「行けるけど……え、遥！」
「待ちなさい！」というマンダレイの言葉を無視して、森に入っていく時風。
道なりに走っていくと、数分で折り返し地点の広場に出る。
「ラグドール！マンダレイが心配して……」
広場に出た時風が歩いて呼び掛けるが、それはある一点を見つめて止まる。
「……ラグドール？」
ラグドールの姿はない。それでも名を呼んでしまうのは何故だろうか。
時風が見つめる先には、真っ赤な血が水溜まりのように地面に残っていた。
「おい！遥！」
後ろから聞き覚えのある声。振り向くと、時風を追ってきたらしい兄さん。
「ラグドールいたか……」
時風の横に立った兄さんも言葉が詰まる。
「兄さん、この血って……」
「状況を考えて、ラグドールのものか」
(ラグドールの血……？じゃあラグドールは？)
「……ラグドール、ラグドール!!ラグドール!?」
途端にラグドールの名を呼びながら辺りを探す時風。
何処にいるの。返事をして。お願い、死なないで！
何度叫んでもラグドールは出てこない。
(ラグドールっ……何で……)
「嫌だよ、ラグドール!!」
髪を靡かせながら、必死で辺りの茂みを探すが、ラグドールの姿は見当たらない。
「落ち着け、おい遥!!」
兄さんに腕を掴まれた時風は強引に振りほどく。
「落ち着ける訳ないじゃん！これがラグドールの血なら相当な傷も負ってるし、出血多量で死んじゃう!!」
(ラグドールっ、お願い死なないで！)
嫌な汗が流れるのも無視して、茂みを掻き分けてラグドールを探す時風。
すると、プッシーキャッツ専用の猫耳型無線機をあった。
見覚えのあるそれは壊れていて、赤い血が飛び散ったように付いていた。
嫌な汗が止まらない時風は、ゆっくりと手にする。
目を離せない時風だった。
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作者名：末崎時野 | 作成日時：2019年6月26日 12時
