49 ページ2
その後の教室でのホームルーム。
「えー……そろそろ夏休みも近いが、もちろん君らが30日間1ヶ月休める道理はない」
相澤先生は何やら資料を捲りながら、淡々と述べる。
(休みたい……)
「まさか……」
本の少し教室内がざわめく。
「夏休み、林間合宿やるぞ」
「知ってたよー、やったー!!!」
すぐに騒がしくなる教室。
「肝試そー!!」
「風呂!!」
「花火」
「風呂!!」
「カレーだな……！」
「行水!!」
「自然環境ですと、また活動条件が変わってきますわね」
「いかなる環境でも正しい選択を……か、面白い」
「湯浴み！」
「寝食皆と!!ワクワクしてきたぁあ!!」
峰田君は何を伝えたいのだろう。
「ただし、その前の期末テストで合格点に満たなかった奴は……学校で補習地獄だ」
相澤先生が話し出して静かになったが、重大な情報にまたもや騒がしくなる。
「みんな頑張ろーぜ!!」
「女子ガンバレよ!!」
放課後、鞄を手に帰ろう教室を出ようとして、誰かに引き止められる。
「あのさ、一緒に帰らない？」
耳郎さんだった。
なんだか恥ずかしそうにする耳郎さんに、時風は何の迷いもなく頷く。
「時風って、下の名前なんだっけ」
「遥」
「はるかね、じゃあハルって呼んでいい？」
あだ名みたいだ。
「……うん、いいよ」
先程の恥ずかしさが移ったのか、時風は急にソワソワしだした。
「ハル？」
「その、大体苗字呼びだったから、あだ名とか嬉しい、ありがとう」
恥ずかしいような、くすぐったいような。
気付かぬ内に頬が緩んでしまう時風。
「ハルさ……笑ってた方がいいよ」
「可愛い」という耳郎さんに時風は慌てて首を横に振る。
「そんな、可愛いなんて。可愛いのは八百万さんとか麗日さんとか、もっと可愛い人はいるよ」
「え、ウチは？」
突然耳郎さんからの質問に、時風は思考を停止してしまう。
(耳郎さん、は……)
「カッコいい！」
期待外れだったのか、耳郎さんも驚いている。
「え、ウチカッコいいの」
「……ごめんなさい、女の子に“カッコいい”はないよね」
「いや、いやいや！別にショック受けてる訳ではないよ」
「そっか」とだけ言った時風は、早足で昇降口を出る。
「ねぇねぇ、番号交換しない？」
駆け足で後を追ってきた耳郎さんは何かを手に提案をしてきた。
「番号……？」
「ケータイの」
(ケータイ……確か轟君も持ってた)
疑問が増えた時風に、耳郎さんは不思議そうに尋ねた。
「もしかして、ケータイ持ってない？」
「……持ってない」
「マジか」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 4人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：末崎時野 | 作成日時：2019年6月26日 12時
