(完結)どうしても彼には敵わない・SS視点【ars】 (ページ8)

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『智くん、お昼だよー。学食行くでしょ？』

いつものように４時間目に寝てしまった智くんを起こして学食に誘う。

気持ちよさそうに寝てるなあ。

「昼、？」

『そうだよ』

「おいら学食行かない。」

弁当を持たない彼はふらりと教室から出ていってしまった。

「大野どこ行った？」

『わかんない。』

「まぁいいか。今日は何食おっかなー。」

智くん、どこに行ったんだろう。

学食に行かずに彼は何を食べるんだろうか。

部室に朝練の時財布を置いてきたことに気付いて取りに行く。

席の確保は任せたから大丈夫だろうけど。

財布を持って学食に向かうと知ってる女の子。

『あ、Aちゃんだったよね？』

「櫻井先輩、覚えてくれてたんですね。」

それはこっちの台詞だ、と思いながら彼女の手に持っているものを見る。

弁当だ。

しかも女の子1人分にしては大きい。

『もちろん。あれ、お弁当持ってどこ行くの？』

「美術準備室に。櫻井先輩は学食ですか？」

俺が財布を持っているから学食だろうと思ったのだろう。

でもそこじゃない。

美術準備室。

そこは基本的に使わない。

使うとすれば智くんただ１人。

本人から聞いたんだ、ほとんど自分専用なんだって言ってた。

『あ、うん学食。美術準備室ってことは智くんと？』

ドキドキしながら聞いた。

否定してほしい、そう思いながら。