たとえばこんな、出逢いでも【ky】

どうしようもなく ページ21

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フ「心臓が苦しい原因、てわけね」

キ「………」

フ「解るよ、笑顔が素敵だし、スゴイいい子じゃん。いい子、じゃないか。人妻、か…」

フジはソファに腰掛け、オレも反対側に身を沈めた。

フ「人妻ってえろいよな？って言ったじゃん？あれ、解る気がするわ」

キ「え？！なに、フジもそう思った？」

フ「あの人はさ。自分はもう既婚者だから、キヨみたいな独身男性に恋愛対象として見られる訳はないだろう、と思ってんだよ。だから、自然と無防備になるんじゃね？」

キ「…あー、なる…」

そういう事か。すげえ腑に落ちた。…オレが男として見られてないんじゃなくて、自分が女として見られてる訳ない、って思ってんのか。

フ「…でも、キヨは恋しちゃってんだな」

キ「なに、バカにしてんの？」

フ「そうじゃなくてさ。本来だったら段階踏んで親しくなる筈が、急激にパーソナルエリアに踏み込まれたもしくは踏み込んだ」

キ「…うん」

フ「それが嫌じゃないんだったら、もう、惚れてるって事じゃねえの」

キ「……」

フ「お前が、家のカギ預けるなんてなあ」

…解ってる。自分でも、驚いてる。


フ「…でも、…やめときな？」

キ「え…、ああ、わかってる…」


やめときな、って言われてやめられるなら、こんなに苦しい想いをしてないんだよ…

キ「努力、する」

フ「うん。…あ、パン、回復したら食ってな？お前イチオシのベーコンのやつも入ってるから」

キ「おう、サンキュ。気をつけて」


フジが帰ると、家の中はしん、と静かになった。
お粥の入っていた容器を洗い、ハチミツのやつをもう一度飲んでから今日の分の動画を撮影し始めた。

なんとか喉の調子も戻って無事撮影を終え編集していると、スマホに通知が来た。

…りくだ。こないだ、LINEを教えたからな。

りくキヨ、今度の土曜日あいてる?
りくサッカーの試合があるんだけど、見に来られない?

サッカーの試合…普通に観に行きてえ。行っていいのか？でも、なあ…
キヨ父さんと母さんは来ないの?
りくパパは仕事。ママも午前中は仕事かも
それは…可哀想だな。応援、欲しいよな。いや、でも…
キヨママに聞いてみて、いいって言ったら行けるよ
りくわかった!

はあ…めちゃめちゃ行きたい。りくもりんも大好きだし、サッカーも大好きだし、…Aさん、も。


オレは、いつのまにか。
…どうしようもなく、好きなんだ。


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