たとえばこんな、出逢いでも【ky】

遭遇 ページ37

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結局、悪知恵も働かず悶々としたまま夕方になった。朝ジョギングして、パン屋の前をそれとなく走り抜け、シャワー浴びて昼寝をし、今に至る。

意識してしまうと気軽にLINEもできないもので、りくに「遊ぼうぜ」と打つことすら日和(ひよ)ってしまい、途方に暮れていた。


…あの男は流石に大阪から戻ってきたのだろうか。確認する術もない。昨夜駐車場を確認した限りでは、あの男の乗っていた車はなかったけど。


ぐうー、という腹の音で自分が空腹な事に気づいた。…コンビニ行くか。財布とスマホとカギを持って家を出る。外は暗くなってきていて、夏だと言うのに何故か物哀しい。

…Aさんに何気ないLINEでも送れば、A家の夕飯にありつけるかもしれない。でもあの明るい幸せな食卓を囲んでしまうと、自分の家族じゃないという現実を突きつけられてしまう。

…根本的に問題を解決しなければならない。



悶々としながら歩いているとコンビニに着いた。店内をザッと見て、適当にメシとお茶をカゴに入れる。…なんか甘いもん、食いてえな。


デザートコーナーを見に行くと、1人の女性が顎に手を当てて悩んでるのが見えた。…解るよ、悩むよな、どれも美味そうで。しかしオレは即決だ、苺のマリトッツォだ。後ろから取ろうと思ったら、女性も同じものを取ろうと手を伸ばしたので一旦手を引っ込めた。しかし女性も手を引っ込め、「うーん…」とまた顎に手を添えた。

いや、取らんのかい！と心の中でツッコミながらオレは再び苺のマリトッツォを取ろうと手を伸ばした。すると女性はビクッと体を揺らして反射的にオレを振り返った。デザートに集中しすぎだろ、って…

「「えっ！？」」

A、さん…！？いや、待って。心の準備が！

A「わっ、キヨさん…か。びっくりした」

Aさんは一度強ばらせた身体から力が抜けたように、ふぅ、と息を吐いた。オレと知って安心してくれたのが嬉しくて、勝手に口角が上がる。え、でも…

キ「なんでこんな時間に一人でコンビニ？」

あー…旦那帰ってきたのか。それならりくとりん見てて貰えるもんな。


A「ん…と、今日、家に誰もいないから…」

キ「えっ、」


いや、待て待て。違うぞキヨ。全然そう言うシチュエーションじゃないし、ましてやオレは中坊じゃない、アラサーだ。落ち着け。漫画の読みすぎだ。


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