Blue Ocean ～青色王子に夢中～ (ページ30)

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毒舌執事のとある出来事９ページ30

「………………」

「………………」

地下の鬱蒼とした空間には似つかわしくないくらい艶やかやな紅茶と香ばしいスコーンの香り。

無言のまま、ティータイムがすすみます。

ふと、周りにある鍵のコレクションに、以前、著書でみた形のものを見つけました。

「これは、スカンジナビア式のディスクタンブラー錠ですか？」

ピョコンと彼の頭が跳ね上がりました。

「………！」

ついでに、わたしくしの鼓動も一瞬跳ね上がりました。

「そうです、それは」

スイッチが入ったように、饒舌になった彼が、はじめに示した南京錠以外の鍵の説明まで始めてしまいました。

「…………」

淡々とした説明なのに、眼鏡の奥に隠れた瞳がキラキラと輝くその様は、まるで宝物を一生懸命に友人に披露してしている少年のようです。

それに、流れる説明は、彼の美しい声色にのせて、まるで清らかな賛美歌のように感じてしまいます。

「…………」

ほとんどすべてのコレクションを説明し終えようとしたとき、彼の声が止まりました。

「どうかなさいましたか？」

わたしくしの問い掛けに、ハッと振り向く彼。

はじめて見る反応です。

「………いえ、僕の話を中断せずに聞く人が、はじめてだったもので」

「わたくしが、はじめて、ですか？」

「はい、はじめて、です」

何故、わたくしは嬉しいなどと思うのでしょうか。