異能力ってなんですか？【文豪ストレイドッグス】

30曲目 ページ32

樋口一葉side

夜も更けてきた頃、私達ポートマフィアのパーティーも終わりを迎えた。

片付けを総出で行っていると、外にAが見えた。
彼女はまだドレス姿で、冷える夜には寒いだろうと上着を持って外に出た。


話しかけようと近づいたら、星を見上げていた彼女が一言。


「……………元の世界に戻りたいなー」


『えっ…？』

思わず声が出てしまった。急いで口を閉じてももう遅い。
彼女はゆっくりと振り返る。




「今の聞いてたー？」


綺麗な、そして少し恐怖を覚えるような笑顔で聞いてくる。

うなずくと「そうかそうか〜」とうなずきながらこちらに向かってゆっくり歩いてくる。


そうだ、初めから可怪しかった。
もとからこの世界にいたのなら、もっと話題になってもおかしくないほどの演奏だった。

それなのに、私のことを初めてのお客さんと呼んだ。
初めての演奏ならまだ分かるが、彼女の友人などもお客さんに入るだろう。

だが、違う世界の住人なら辻褄が合ってしまう。



彼女の歩く音が止み、私の目の前に彼女は立つ。
するとすぐに、顎に手を添えられる。


「今度教えてあげるからー、他の人に言ちゃ駄目だからね」




普段の可愛らしい笑顔と違い、有無を言わせないほどの圧。














私はうなずくことしかできなかった。

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