53.先生の先生 ページ5
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「智先生……！？」
お集まりの時間じゃないけれど、
ピアノに座って、子供たちのリクエストに応えながら
一緒に歌をうたっていたら、
二階で休んでいたはずのA先生がそれを聞き付けたらしく、
下に降りてきて、おいらを見つけた。
「こんにちは！ A先生」
間奏中ににっこりと笑顔で挨拶をして、
そのまま曲を弾き続ける。
そして、最後まで終わったところで、
あらためて、彼女を見上げた。
「ありがとうね」
「え……？」
「素敵な知らせと、ここの子供たちに会わせてくれるきっかけをくれたことだよ」
「智……先生」
泣き出しそうな君の顔は、ちょっと切ないし、
子供たちの前ではいただけない…かな。
「二週間、おいら頑張るから、
A先生も 頑張って元気になってね」
「……っ……///」
しゃがみこんで泣き始めた彼女に、
子供たちが心配して駆け寄っていく。
「A先生！ また おなかいたいの？」
「ねてたほうがいいよ」
「大丈夫、ありがとう」
「でも、先生 泣いてるよ？」
「嬉しいの」
子供たちの手を握りながら、彼女は立ち上がり
おいらを見て、微笑んだ。
「わたしの大好きな『先生』が……みんなのところに来てくれたから」
「先生の先生？」
子供たちが、不思議そうにおいらと彼女を見比べる。
「そうよ。
智先生は…… 昔も今も変わらない……私の尊敬する先生なの」
その意味はわからなくても、
彼女の笑みと言葉が、
子供たちが彼女に寄せる信頼をおいらへ託してくれる。
「じゃあ、その『先生』のいうことをちゃーんときいて、ゆっくり休んでくれる？」
おいらの問いかけに、彼女は溢れていた涙を拭った。
「はい……智先生」
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作者名：たると
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/list/tarutolist01/
作成日時：2015年12月2日 12時
