80.先生じゃなくて ページ31
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事情を察した園長が「それじゃあ」とポンと手をうった。
「智先生、今日は もう上がってください」
「は？」
「もう延長保育は、この子たちのお迎えで終わりですよね？
ですから、仕事は終わり。
早く着替えてきてください」
「え！？ でも、クリスマス会の準備……」
「明日から頑張ればいいじゃないの」
「？？？」
どういうことか状況がのみ込めないおいらだったけれど、
「早く！」と背中をぐいぐいと押し出されて、
とりあえず事務所のある園舎へと向かう。
後ろでは、二組の親子に向かって
「ちょっとお待ちくださいね」
と言っている声が聞こえた。
「園長先生の言う事ですから、絶対ですよ」
様子を見ていたらしい副園長が、
何だか笑いながら おいらに念を押してくる。
仕方なく、更衣室でエプロンを外し
帰り支度をしてから、また玄関へと戻っていった。
「それじゃあ、智先生 おつかれさまでした」
園長の言葉に
「おつかれさま〜」と同僚の先生からの挨拶も重ねてくる。
「あの、どういうことですか？」
「鈍い子ねぇ」
園長…… いや、母ちゃん？
苦笑しながら、おいらの肩をバシッと叩いて言った。
「仕事は、もう終わり」
「？」
「先生じゃなくて、あなたはもう大野智という 一個人。
お友達からプレゼントをいただくなら、問題ないじゃないでしょう？」
「え……っ？」
母ちゃんから腕がのばされて、おいらは驚く。
「誕生日おめでとう、智
生まれてきてくれて……ありがとう」
「母ちゃん……//」
「今夜くらいは、実家に帰ってきなさいよ。
お祝いくらいさせてちょうだい」
「…………うん//」
母ちゃんからのハグ。
この園でされたのは、生まれて初めてだった。
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作者名：たると
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/list/tarutolist01/
作成日時：2015年12月2日 12時
