歪みの狭間 ページ13
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それは唐突な出来事だった。
追っ手である死喰い人から上手く逃げながら、一時避難としてイギリスの街並みにひっそり溶け込んでいた。
ユンギ先輩は途中で無理矢理切り離したけれど、きっと無事に魔法省に戻ったはず。
逃走劇から僅か、7日。
1週間の内に何が起こったと云うのか。
まるでこの世の終わり、終焉の果てのような景色に人々が空を騒然と見ている。マグルも何も関係ない。最早、魔女狩り騒動すら無視した光景。
パズルが崩れるように。バグが広がるように。
てっぺんから崩れてく空と、朝空に残る月。
「っまずい、本部に戻るぞ!」
すぐそばの表通りを駆けていった数人。
入り組んだ路地裏を急いで進み、私の監視をしていた魔法省を撒く。これで、とうとう私も立派な反逆者扱いだろう。
それでも、挫けそうでも首から下げたリングに何度も足を動かす。もう一度、幸せを取り戻す為に。
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もう一度、あの日常を取り戻す為に。
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息継ぎもままならないほど走り抜けて、姿くらましした先の叫びの館で、膝から崩れ落ちる。
心臓が痛い。
ユンギ先輩が言っていた言葉が、頭の中で回って気持ち悪い。嗚呼気持ち悪い、吐きそうだ。目を瞑ってやり過ごすも、血の気が引いてもう動きたくない。
何日も、何十日間も逃げ惑うまま、死喰い人と魔法省で板挟みの日々は狂ってしまいそうな程辛かった。
アズカバンも、こんなに辛いのだろうかと思うほどに。
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自分でも訳がわからない。でも、どうしてもこうしなければいけない気がして、いや、思うよりも前にそうしていた。
震える指先で、杖先をこめかみに当てて、憂いを取り出した。そうして、それをガラス瓶に押し込んで、コートの内ポケットにしまう。
これも、全部繰り返したことなのか?
もううんざりだ、やめにしよう。精算しよう。
先輩たちが頑なに守ってた秘密が、明かされた今。
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私がするべき事も、どうすれば良いのかもわかった。
痛む胸と零れそうな涙も、置いてきてしまった大切な全てのためなら隠しきって、頑張れるから。
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『魔法省神秘部のミンユンギに』
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杖先から飛び立つ銀の鳥が、するりと消えていく。
今日で最後にしよう、暗黒の時代も、逃げ惑う日々も。
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▲たると▽(プロフ) - 青衣さん» コメントありがとうございます!楽しみにして頂けてるなんて、更新頑張れます!青衣様もご健康でお過ごし下さい(* ´ ` *) (2021年1月15日 21時) (レス) id: 53fe41528b (このIDを非表示/違反報告)
青衣(プロフ) - まださむいので体調にも気をつけてくださいね (2021年1月14日 23時) (レス) id: 13074a2c40 (このIDを非表示/違反報告)
青衣(プロフ) - 更新ありがとうございます。ずっと楽しみにしてました。これを楽しみに頑張れます! (2021年1月14日 23時) (レス) id: 13074a2c40 (このIDを非表示/違反報告)
▲たると▽(プロフ) - あいさん» ありがとうございます!ゆっくりではありますが更新頑張ります(* ´ ` *) (2021年1月14日 23時) (レス) id: 53fe41528b (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - ▲たると▽さん» 更新再開嬉しいです!作者様のペースで無理せず更新なさってくださいね。応援しています(´ω`) (2021年1月14日 10時) (レス) id: 6e5c7cab71 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:▲たると▽ | 作成日時:2020年11月30日 22時