▲午前6時の魔法使い▽［完］

君が不器用なぶんーJK ページ38

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｢Aが不器用な分俺がいるでしょ｣



｢だから俺がダメになったら傍にいて｣








もう二度とAの手を掴み損ねる事が無いように。伸ばした手が空を切るのはもうごめんだ。




お腹に回した手に、Aの手がそっと添えられる。そのまま腕の中でくるりと回ると、胸に頭を押し付けるように抱きついてきた。




静かに震えるAの身体をぎゅっと抱き締めて、片手で頭を撫でる。小さく鼻を啜る音がするのに気づかないフリをして、朝に何をするかの話をする。

日付が変わってるから今日の朝になるね。クリスマスだから七面鳥が出るかな。クリスマスプディングもきっとあるよ。


Aの好きなチョコも出るかな。ヒョンたちきっと羽目外すから、俺らがまた抑えないとね。






何でもない日常を、Aがそれだけを誰よりも何よりも求めているのは気付いてる。俺らと違って小さな頃から苦しんできた。


人と違う目の色。それだけで、どれだけ生きずらいだろう。





その生きずらい筈の世界で、Aだけが俺の目を惹いた。あの組み分けの瞬間から、Aだけが目にとまってたんだよ。

毒薬も妙薬も、小さな頃から慣らされるような環境。あれだけの知識を、外界との接触を代償に手に入れざるを得ない幼少期。



Aを守りたい。傍にいたい、いて欲しい。頼って欲しくて、笑っていて欲しくて。

腕の中の体温が奇跡のように思えて、零れる涙に息を殺した。



ユンギヒョンの話を聞いてから何度あの偉大な魔法使いに感謝しただろう。Aの一族が生きていなければ、Aと出会うことも、好きになることも無かった。

それが怖くて、途方もなく大きな空虚に襲われて。




確かめるようにまた、腕に力がこもる。









『っ...約束するよ。そばに、いる』





たった一言。その一言。それだけが、俺の幸せを縁取ってく。Aの言葉が、行動が。何もかもが俺の感情を動かして止まない。


好きで、もういっそ苦しいくらいに好きで。



初めて好きになった人が、Aで良かったって思うよ。不器用な、優しい人。




背に回された腕にきゅう、って力がこもるのがわかった。でも足りない。もっとくっつきたい。今はそれだけで十分幸せだから。





｢A、もっとひっついて｣


『え...、っわ』



抱き上げて、空を一望できる場所で2人座る。足の間に挟むように座って、後ろから抱き締めて。





空を見上げていた。







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