▲午前6時の魔法使い▽［完］

優しい言葉でーJK ページ37

*


隣にあったはずの体温が消えて目が覚めた。


談話室を見回してもいない。起きた俺に気づいたユンギヒョンが、Aは天文台だってわかってるように教えてくれた。

寒いから毛布を持って、マフラーはジミニヒョンが巻いてくれた。防寒もそこそこに急ぎ足で天文台まで行くと、あの日みたいに空を見上げる背中。



けれど、前とは違ってどこか不安げな雰囲気。こんなの勘でしか無いけど、でも良くは無いと直感で思った。何かを思い詰めるような、そんな顔。

風が吹いて、少し寒そうにしているのを見た。



あ、そう口に出した時には、足はAの方に向かってて。そっと後ろから、毛布を被ったまま抱きしめる。好きな人の声、匂い、体温。

幸せで、空を見る余裕すらあって。満天の星空に感動しているとAの耳が赤いことに気づいて少し固まった。嗚呼、余裕がどこかへ消えてく。


期待してしまいそうになる、自惚れてしまう。





同じ気持ちだったら。同じ想いをしているなら。








｢ね、A。俺頑張ってみても良いかな｣






戸惑った声、意味もわからずうん？って。それでいいよ、そのままで良い。俺が頑張って振り向かせるから。だからそこで待ってて。

Aは待ってるだけでいい、俺がそこまで行くから。




Aの不器用な優しさに救われた気がした。俺が気負って生きてかなくて良いって、生きてって言われた気がした。あの少女が男の子を守ってくれたから、俺が生きてる。


でも、Aはそれを当たり前だって思ってる。



きっとAがその少女でも、命を投げ出して見ず知らずの赤子を助けたんだろう。ねえでも俺はそれが1番怖いよ。

その優しさがいつかA自身の身を滅ぼしそうで。いつか本当に先にいってしまうようで。



｢A、お願い約束して欲しい｣


『ん？何の...？』





｢Aは優しいけど、不器用だから上手くは言葉に出来ないし人に理解されない時もあったよね｣


『...ああ』



｢何度も傷ついて、何度も苦しんで、けど、それでも誰かに優しさを向ける事に変わりはなかった。びっくりするぐらいお人好しで、呆れるくらい誰かの為に動く｣




Aに向けられる羨望の視線も、嫉妬からの嫌がらせも、一度だって何も言わずに受け止めて。

誰かの為にしか魔法を使うことは無いと知った。






だから。









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此処で文字数が足りないことに気づいた。

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