優しい声 ページ24
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死ぬかと思った。もうダメかもしれないって。
季石の国で雪は降らないから、こんな寒空の下月の光すら満足に入らない森で。一人指先の感覚も無くなるくらい走った。
けれどあんまりにも多くの木が密集するせいで星すら見えなかった私は。
足が雪に取られたその時、両目に耐え難い鋭い痛みが走って思わずしゃがみこんだ。今まで何度か味わったものより酷いかもしれない。
呼吸が浅くなって、絶えず涙が零れて。ぎゅうぎゅうと眼球を締め付けるかのような痛みにもがき苦しむ。いっそ魔法生物に殺されれば楽なのだろうか。
木にもたれかかって空を仰いでいると、丁度自分のもたれた木が月光を差し込んでいる事に気づいた。ぼやける視界でただひたすら、願うように空を見上げる。
暫くすると痛みが和らいで、だいぶ楽になれた。少しでも先に進みたくて、数メートル進んだけれど大樹にもたれてまた、空を仰ぐ。
魔力が安定していない。気持ち悪い感覚に身体の中が掻き回されてるようだと思った。
もう寒さで身体の末端は冷えきって、震えが抑えられない。このまま進めばに見つかりやすい。魔力のブレは最大の弱みだ。
柄にもなく自嘲の笑みが零れて、投げやりに四肢を放り出した。そりゃ魔力が安定しなければ防寒魔法も効かないよな。何であの時ハンカチ拾ったんだ?
ジョングクたち、心配してるかな。優しい人たちだから、してる気がする。少しでも穏やかにと、目を瞑って思い出す。
会いたいなあ...マフラー、返さないとな。
意志とは反対に弱まる魔力を感じる。目の痛みも完全に消えた訳じゃない。マフラーに顔を埋めるように三角座りをして、体温を上げようとした。
刹那、優しい声がした。確かに、私の名前を口にした。聞いたことの無い声。優しい、低い声。
続いてその声が上げた名前に安堵する。嗚呼やっぱり、優しい人たちだから。申し訳無いな、寒いのにな。危ないのにな。
どうして私が守られる側なんだろうか。
"帰るぞ"の一言が、こんなに胸に染みるのだろうか。
ぽろぽろと涙の溢れる目。ダメだ、そう思って抑えるように必死に身体を抱き込むようにしてたら、回り込んできたその人と目が合った。
これは、そうだ。タンザナイトだ。
光の反射角で色が変わって見える。ミントグリーンの髪はよくわかった。優しい声で立てるか、って、そう言って支えるように背に添えられた手。
不器用な優しさに縋りたくなった。
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▲たると▽(プロフ) - Nightsさん» まずはご返信が遅れてすみません!宝石の色味などにはこだわっていたので、良かったです。作者自身もハリポタが大好きなので、凄く嬉しいです、コメントありがとうございます...! (2022年9月7日 11時) (レス) id: 53fe41528b (このIDを非表示/違反報告)
Nights(プロフ) - 馴染みのない宝石の色が多くで、調べたところどれも素敵な色でした……!ハリポタの世界観を壊さずに表現していて凄かったです!! (2022年3月31日 15時) (レス) @page1 id: 5ba492e76b (このIDを非表示/違反報告)
▲たると▽(プロフ) - Kさん» 返信遅くなりました汗コメントありがとうございます!思ってたよりも好評だったので、今月中に新シリーズか番外編を出そうと思います。ご要望できる限り反映させますので、お待ちください(* ´ ` *) (2020年11月21日 8時) (レス) id: 53fe41528b (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - とってもとっても満足でした!ハリーポッター大好きで、さらに面白く捻ってあって最後まで楽しめました!続編とか対悪みたいなのも期待しちゃったりして、、、ハリーポッターネタガンガン出してくれると泣いて喜びます!これからも応援してます! (2020年11月19日 17時) (レス) id: ae5af89168 (このIDを非表示/違反報告)
▲たると▽(プロフ) - マミさん» 初めて書いた作品なので色々おかしな所もあったのですが、沢山悩んで書いて良かったです!凄く褒めてくださって、励みになります。コメントありがとうございます(* ´ ` *) (2020年11月18日 11時) (レス) id: 53fe41528b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:▲たると▽ | 作成日時:2020年7月8日 2時