雨上がりは知っている

＊ ページ13

「あ、上杉君！」



こんなふうに急に話しかけられるなんて予測できる？



できねーよな？



心の中でぶつぶついってる時に。


だから。





「はっ...なに？」




思わず変な声がでて一人で赤くなる。





...「は」って。


「は」ってなんだよ。


ねえ、まじで。




タイミング悪すぎなんだよ。


かっこわる。


そんなこと言ってもしょうがないんだけど。




心の声がうるさい。


黙れない。



でも。


俺がそんな声を出したことも気にも留めずに。



俺がこんなことを心の中で行ってるとも知らずににっこり笑いかけてこう口を開く立花。





「今日、一緒にお昼食べない？屋上で。」




いままで種族も違って。


目があったこともなくて。


それどころか俺の名前すら知らなかった立花。



その当の本人が俺と一緒に飯食おうって言ってくれてる。




こんな状況。





殺しにかかってきてるよな、まじで。




別に死んでもいいとか思ってねーよ？




でもそれくらいうれしかった。



なのに。





「...立花がいいなら。」




自分を殴ることができるなら殴りたいほど気の利かない返事。


こういう時に素直になんなくてどーすんだ、ばか！




でも。


そんな返事でも。



「ほんとっ！ありがとう！」



ってひまわりのような笑顔を向けてくれる立花。





こんな俺の一言でもにっこりと笑ってくれる。


「ありがとう」って言ってくれる。






そういうとこが俺を、もっともっと。




立花を好きにさせてくるんだ。




「好き」


そう口の中で呟いた。





でもそんな二文字は空気によってかき消されて行った。





☆☆☆



そんなこんなでお昼。



一緒に食べようって誘ってくるやつらを押しのけて階段へ急ぐ。





立花が先に行ったことは確か。





目の端でそれが見えたからなんだけど。



意識してるつもりはねーのになぁ。




なんか目が勝手に動く。




わかる？


この気持ち。





んで、多分ここが屋上だよな？



重そうな扉につき当って一瞬立ち止まる。



弁当を持ち直して大きく息を吸う。





好きなやつと二人きり。


しかも誘いは向こうから。





これくらいなら期待してもいいんじゃね？




だから。




ここからが勝負。


どれだけ立花と仲良くなれるか。




どれだけ。



この転生を物にできるか。





「上杉君！」



扉を開けた瞬間飛び出すお前の笑顔。









ここからだ。

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