傷薬 2

意地 -makoto- ページ38

「A、楽しそうで良かったな」

壱馬さんは楽しそうにはしゃいでいるAを思い出したのか笑いながらそう言った

「…ほんと良かった」

あの騒動があって以来
Aと何となく距離を作ってしまい
何度も悲しい顔をさせてしまっていたから
楽しそうにしているAを見ると少し安心した

「Aとなんかあったん？」

「何でですか？」

「いや、なんか慎がAのこと避けてる気がして」

「壱馬さんにはバレバレですね」

「ほんまやで。てか、Aも気づいてると思うけどな」

「…そうですよね」

「何で避けてんの？」

「分からなくて」

「何が？」

「Aにとって俺がはどんな存在なのか…とか」

「慎にとってそれは重要なことなん？」

「重要っていうか何というか…」

壱馬さんは俺のまとまらない答えを急かすことなく黙って俺の言葉を待っていた

そんな壱馬さんに安心して言葉を繋いだ

「…Aと出会ったばかりの頃、偶然苦しそうにしてる姿見てなんか分からないけどこの子は俺が助けてあげなきゃって思ったんです」

「あ〜、あの時はまじでびっくりした。慎が積極的に行動するの珍しかったしな」

「自分自身も驚くらいAに対してそういう助けたいとか…守りたいとかいう感情があって、気づいたらずっとAの側に居て、メンバーの誰よりもAを理解できるようになりました。そんな俺のことをAは大切だって言ってくれたし、俺も同じように思ってます」

「お互いがどんな存在か十分わかってんじゃん。何でそんな悩んでんの？」

「…でも、最近はAの事全然理解できなくて」

「どゆこと？」

「重要なことは俺に何一つ話してくれないから」

「…あぁ〜もしかして山彰さん？」


壱馬さんは心当たりがあるかのようにそう言った


「俺には話せないのに山彰さんには話せるんだなぁとか色々考えるとなんかモヤモヤしちゃって。Aが今までよりも遠く感じる時があるんです」

「なるほどなぁ」

「結局、今のAに必要なのは俺じゃなくて山彰さんなんです」


出会ったあの日、Aと目が合ってなかったら

苦しそうなAを見つけたあの日、
見つけたのが俺じゃなくて山彰さんだったら

あの日、Aのことを助けなかったら


最近はそんなことを考えてばかりだった

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