【タルパ】ビターネスオールドストーリー【過去】

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物を詰め込みすぎてパンパンになった鞄を、はじけないよう強く押さえ込む。
　今にも「苦しいよ……うえぇぇ……」と聞こえてきそうなかばんさんに何故かとんでもなく罪悪感が湧く。
　でもどうにか堪えてくれ。君はこれからの僕の相棒だから。


「…………」


　簡単に勉強が手につかなくなり、お母様の言い付けを半ば破ってしまい、この家庭に不満を抱いてしまった。
　こんな僕はきっと「月半家にふさわしくない」。
　これは建前なのかもしれないが、どういう理由であれ僕はもう決めた。


　この家から去ります。


　俗に言う「家出」というやつにあたるのだろうか。
　僕は家出した後、お父様お母様に心配して家出した我が子の捜索をしてほしい訳じゃない。
　むしろいつも通り無関心でいて、月半家に新しい養子でも入れて僕の代わりに立派な後継ぎにしてほしいくらいだ。

　気を引きたい訳でも、改心してほしい訳でもない。

　もう厭なんです。「後継ぎ」としか見られない毎日は。だから決めたんだ。

　まるで意思を示すように力任せに拳を握りしめている事に気付き、冷静に計画を練ろうと深呼吸を繰り返す。


　ここは二階。窓から出るとしてもどうやって降りる。誤って落下したら大怪我じゃすまない。
　そもそも屋敷内全ての窓と玄関の鍵に装置がついてる。そう考えるとテラスから出るのも危険かもしれない。

　……じゃあどうする？穴でも掘れというのか。

　最悪窓ガラスを割るというのもありかもしれないが、そうすると音で誰か来てしまう可能性がある。
リスクが高い。
　でも他に良い方法があるわけじゃない。リスクは伴うがそれが最善策か。

　そうか。昼間だったら人が来てしまうなら深夜にすればいい。人の活動時間を過ぎた深夜に割ればきっと人も来ないだろう。


……音を出さずに割る方法なら、一つだけある。


か、念には念を。出発は深夜にしよう。

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