【タルパ】ビターネスオールドストーリー【過去】

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『この家庭環境が苦しい』。

　一つ認めてしまうと、心のどこかでは前々から思っていた疑問も全て肯定してしまう。
　ずっと難なくこなしてきた勉強が今日突然手につけられなくなったのは、多分拒絶反応で合っているだろう。
　年齢が上がると共に、徐々に増えていった勉強時間の負担が貯蓄されていて今爆発したという感じなのかもしれない。

　それか度重なる、齢10にしては無謀すぎた１日8時間勉強という辛さから来た身体のボロか。精神的苦痛もありえるかもしれない。

　そしてこの月半家の異常なまでの英才教育が、お父様お母様が……苦手だったことも認めてしまおうか。


「……とにかく」


　勢い良くベッドから起き上がるとクローゼットを開いた。
　服や靴、そしてその横にあるタンスからは毛布など生活に必要最低限のものを取り出していく。
　ある程度ものを揃えるとそのまま愛用のかばんに次々詰め込んだ。


「次は……」


　クローゼットとタンスの中の必要なものは一通りかばんに詰め終わり、今度は何を入れるべきかと部屋中を見渡す。
　これから実行しようとしている行動に必要なものは何か。

　そもそもここ、僕の部屋には本当に最低限しか物を置いていない。

　否、置かれていない。

　自分の趣味で部屋に飾っていたインテリアなどは、「月半家の一人息子にはふさわしくない」という身勝手な理由で昔没収されてしまったのだ。
　……月半家はそんなにすごい家なのかと思った事もあるが、今はもうどうでもいい。

　つまり最低限しか物がないため、何をかばんに入れようか迷う程でもない。
　それにこの部屋に残された物は基本生活に必要不可欠なものだけだ。よって、ここにある物は全て詰め込めばいいという事になる。

なかなか荒い考えな気もするが今はこれで正解。だと僕は思う

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