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バルコニーから戻ってきたジョングク様は立ったままその様子を見ていた私をあちこち見て、満足したのか出るよと声を掛ける。
さめざめと泣くお姫様とガタガタと震える総統閣下に一瞥する事もなく出ていったジョングク様の足元には、無数の死体が転がっている。
「一応聞くけど血つけてないよねA」
『そうですね......一滴もついておりません』
「良かった。ヒョンが暴れる前に部屋入っといて」
けらけらと笑って機嫌よくソクジン様とユンギ様の乗る馬車と別の方に乗り込まれたのを確認して、ソクジン様の方へ行こうと踵を返してすぐにこっちに乗りなよ、と声がかかった。
しかし一応護衛の身なので、と断りを入れたのに、どうやら聞き入れられないらしく。
「ヒョン!Aこっちに乗せてもいい?」
「えー?良いけど.....じゃあそっちのボムギュ寄越して」
「はーい!」
呆気なく交代させられ、目の前でにこにこと此方を見るジョングク様と2人の馬車内が死ぬ程気まずい。
『......お戻りになられたらすぐ、湯あみに行って頂けるよう、準備しておきます』
「うん、ありがとう。ねえA」
『はい』
「テヒョンイヒョンの手綱、ちゃんと握っててね、まじで」
思わず言葉が出てこず、何とか頷いてみたものの、突然の発言に動揺してしまった。面白そうに窓に頬杖をついてその様子を見られている。
ジョングク様は基本城内の使用人と全く会話されたりしないが、私や専属使用人に対してはよく話して下さる。特に私にはテヒョン様関連でよくお話に来られるのだが、面白がっている節が抜けないのはこういうところだ。
「テヒョンイヒョン、滅多に武器取らないけどさ。その分枷が外れたらぶっ飛んでんだよ。俺でも正直止めらんない。多分腕の1本や2本持ってかれるし、肋1本くらい余裕で逝く」
『は、はぁ......』
想像できない。
そもそもテヒョン様が武器を持っている所を見た事が無い。
「で、その枷がAだから。絶対、特に退職とかダメだよ。ヒョンの目の届くとこに居てくれたら平和なのは確実だから」
「ヒョンから離れようとか、思わない方が良いよ」
見たこともないほど真剣な目で見られ、居心地が悪かった。
懐に常に入れているそれが、見透かされているようで。心の内を知られているのではないかと思うほどで。
あの異様な執着が、いつか何か良くない事を起こしてしまうのでないかと思う度、迷うのだ。
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▲たると▽(プロフ) - 茜さん» 長い間ご返信遅くなってすみません!ありがとうございます!励みになります! (4月20日 1時) (レス) id: 4ea375d9d8 (このIDを非表示/違反報告)
茜(プロフ) - 設定からもう最高に面白いです!描写が丁寧で情景が浮かびやすくてすごいです!続き楽しみにしています💕 (11月23日 0時) (レス) id: 1a56d20f1c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:▲たると▽ | 作成日時:2023年10月31日 0時