第51話 お前だってさ 【シルクside】 ページ8
わらわらと動く人の動きがスローモーションみたいに見えた。
キーンと頭の奥で耳鳴りがして、何も聞こえない。
友達が彼女を取り囲んで必死に呼びかけていても。
殴った奴が逃げようと走り出しても。
身体は石のように固まって動かなくて。
俺は、
俺は、動けなかった。
「──── Aちゃん!!」
耳鳴りを蹴破って入って来た涙混じりの彼女を呼ぶ声。
そちらを見れば泣いている友達と、先生の姿。
俺が、するべきことは?
──── 決まっている。
いつの間にか呪縛の解けた足は、地面を強く蹴って、
迷いもなく、あいつに向かって突っ込んで行った。
「あやまれ……っ
Aにあやまれっ!!!」
胸倉掴んで泣き叫べば、数人の先生がやって来て俺を引き離す。
先生に連れられて行くそいつを、俺は泣きじゃくりながら見ていることしかできなかった。
『………しるくぅ』
あんなにざわついてた中で、一番弱々しい彼女の声がはっきり聞こえたのは、今でもなんでだろうと思う。
考えるよりも先に、俺は踵を返して地面に両膝をついた。
真っ赤に腫れた頰を見て、俺の心はズキンと痛む。
「ごめ ────」
『いたいとこ、ない?』
「………へ?」
怒りもしないでそんな事を言われて、俺は間抜けな声を出してしまった。
我に返ってブンブンと首を縦に降る。
痛いのはお前だろ。なんで、なんでそんな、
『…よかったぁ』
安心した笑顔なんか。
『シルクがいたいの、やだなぁっておもったの』
「でもっ、Aがなぐられて…!」
『いつもまもってくれるでしょ?
…わたしもおかえししたかったの』
また微笑んで、そんなこと言うから。
俺はまた泣けて来て。
死んじゃったらどうしようって怖くて。
俺のせいで俺の隣からいなくなったらどうしようって。
Aの右手を両手でぎゅうっと握った。
何が守ってるだよ。俺が守られてばっかじゃないか。
でも、でも、これからは、絶対に。
「おれ…っ これからはまもるから! やくそくっ… こわいおもい、させないっ、からぁ…!!」
『…うん、ありがとう』
そこで君は、やっと泣いたね。
君は覚えてるのだろうか、俺は何度も何度も、助けられてるんだよ。
でもさ、男が助けて貰ってばっかはカッコ悪りぃだろ?
──── 今度は守れるくらい強くなりてぇって、
その時思ったんだよ。
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リヲン - え?これでおわ、、、り、、? (2019年7月19日 0時) (レス) id: ea1b014744 (このIDを非表示/違反報告)
tarteyou(プロフ) - ぬこさん» ありがとうございます感激です…(T-T) これからも読んで頂けたら嬉しいです!! コメントも、励みになっております。 楽しませられるように精進していきます! (2018年1月3日 21時) (レス) id: a988f6ab2a (このIDを非表示/違反報告)
ぬこ - お久しぶりです。続編、おめでとうございます!!いつも楽しく拝見させていただいてます!これからも頑張って下さい! (2018年1月2日 23時) (レス) id: 0bfc9f3afc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:tarteyou | 作成日時:2018年1月2日 20時