第50話 思い出す 【シルクside】 ページ5
──── かえせよ!
はっきり声が聞こえる。
なんだこれ、夢?
──── 取ってみろよチービ!
あ、なんかこれ知ってる気がする。
小学一年生と六年生では、体格も力も違いすぎて。
見上げたその姿は、大人の様に見えたの覚えてる。
「おれらがいまつかってんの!」
「俺達もサッカーすんだよ ほらどけどけ」
俺らが先にグラウンド取ったのに。
なんだよ六年生だからって!
「はやいもんがちだろ!」
「年上が優先に決まってんだろ!逆らうんじゃねーよ!」
そう言って、そいつは俺が抱えていたボールをひょいと取り上げ、頭の上まで持っていってしまった。
「あ!おい、かえせよ!」
「取ってみろよチービ!」
身長の低い俺では、手を伸ばしても全く届かない。
そいつの後ろにいる友達は、俺を嘲る様に笑っている。
「し、シルクっ、またあしたにしようよ、ね?」
泣きそうな顔をした友達が制してくる。ふと視線を後ろにやれば、他の仲間も固まって怯えていた。
…なんだよ
なんでこいつらにこんな顔させなきゃいけねーんだ。
なんで年上ってだけでこんな奴らに負けなきゃなんねーんだよ。
腹の底から怒りがふつふつと湧いて来て。
「…かえせっ!」
「うわっ!?」
何もできない自分にムカついて、突き飛ばしてしまった。
たたらを踏んだそいつを見て、はっと我に返った時にはもう遅くて。
「このっ、何すんだよ!!」
拳を振り上げたのを見て殴られるって思って、反射的に目を閉じたその時。
『だめっ!』
バキッ、と何かが折れる様な音。
後ろでも前でも、悲鳴が上がる。
でも、痛みは無くて。
恐る恐る目を開けると
「な、何だよお前!?」
「え……?」
心臓が、潰れるかと思った。
だって。
地面に倒れ込んでいるのは
「──── Aっ!!」
頰を押さえて蹲る君だったから。
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リヲン - え?これでおわ、、、り、、? (2019年7月19日 0時) (レス) id: ea1b014744 (このIDを非表示/違反報告)
tarteyou(プロフ) - ぬこさん» ありがとうございます感激です…(T-T) これからも読んで頂けたら嬉しいです!! コメントも、励みになっております。 楽しませられるように精進していきます! (2018年1月3日 21時) (レス) id: a988f6ab2a (このIDを非表示/違反報告)
ぬこ - お久しぶりです。続編、おめでとうございます!!いつも楽しく拝見させていただいてます!これからも頑張って下さい! (2018年1月2日 23時) (レス) id: 0bfc9f3afc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:tarteyou | 作成日時:2018年1月2日 20時