素の私ということになります ページ6
Aが男への攻撃を始めた瞬間、女は男へ矢羽根を飛ばした
その時点で女は逃走し、男が囮になることが決まったのだろう。男は女から距離を取り、Aの意識が女から離れるようにして逃げる隙を作ったのだ
話を続けようとAが言葉を発する前に、ちょっと待て、と留三郎が手を挙げた
「…なんで亜月がクロユリ城の矢羽根を理解できるんだ」
全員の視線がAへ集中する
組織の矢羽根を理解できるのはその組織に忍びとして所属している、または所属していた証拠だ
それを分かっている上で、説明してくれと留三郎は問い掛け、他のものはAへ視線を向けたのだ
張り詰めた空気の中、Aは少し間を置いてから口を開いた
「…私がフリーの忍びの桜田Aだからだ」
「な……」
全員が目を見開き、困惑したように隣と目を見合わせる
それもそうだ
桜田Aと言ったらここらでは有名なくノ一で、顔も年齢も不詳の謎めいた人物なのだ
それが今、目の前にいる
しかも事務員として働いていた、あの穏やかで優しい彼女が、だ
「クロユリ城からの依頼で色町へ潜入した時、城の裏切りで負傷したところを伊作が助けてくれた」
今度は伊作へ視線が集まる
「知っていたのか、伊作」
「…まあね」
驚いている同室に、伊作は控えめに返答した
「頭を打った私は以前の記憶を失った。だから怪我が治り、記憶が戻るまで学園にいようという話になった」
「記憶を…じゃあこれまでの桜田君は」
「…素の私ということになります」
土井の言葉に、Aは目を逸らして答える
おんなじだ、とその様子を見て勘右衛門は思った
亜月とA
雰囲気は違えど同じ人物なのだと嫌でも思わされるほど、その照れ方と照れる箇所はかつてのAと同じだった
小さく咳払いをしてAは再び口を開く
「目的は…生徒の誘拐です。これは先程の襲撃から見ても間違いないでしょう。クロユリ城の忍び隊は人数は多くないけどかなりの手練です。綿密に作戦を練らないと被害が大きくなります」
もう1つの目的のAの暗殺はあえて口にしなかった。これ以上心配や労働を増やさないためだ
学園長はそのことに気が付いたが、Aの心情を察したのか何も口にはしなかった
其奴に目をつけられたら死ぬと思え→←作戦続行、襲撃を行う、と
115人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:たると | 作成日時:2022年5月8日 19時