【忍たま】記憶を拭う弐 (ページ2)

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目の前の憎たらしい紺色もページ2

｢よし、そろそろ作業に戻ろう｣

留三郎が立ち上がる

｢はい、次は…用具の補修ですよね｣

守一郎、作兵衛、亜月も続いて立ち上がった

｢ああそうだ、だから次は用具倉庫へ向かうが…しんベヱ達、やけに遅いな｣

三人が走っていった方を見ながら留三郎は呟く

｢私、様子を見てこようか｣

｢いいのか？助かる。もしかしたらついでにおやつでも食べてるのかもしれないが…一応な｣

｢うん、三人は先に作業しててね｣

.

私は一年生三人が走って行った同じ方向へ走り出した

1日過ごすことによって忘れかけていた不安が再び膨張し始める

(食堂でゆっくりしてるだけ？それとも落とし穴に落ちた？もしかして…

あの男に攫われた？)

その考えが浮かんだ瞬間、心臓が大きく鼓動を始める

(早く行かなきゃ)

スピードを上げ、角を曲がった時だった

｢…！！｣

目に飛び込んできたのは、手を繋ぎ怯える平太君としんベヱ君、2人に苦無を向ける女。そして、喜三太君を腕に抱え、首元に苦無を突き付ける男の姿だった

しんベヱ君と平太君の足元には苦無が1つ落ちている
抵抗しようとしたのだろうか

よく見ると喜三太君の手には血が流れていた

｢やめて！！｣

勢いよくしんベヱ君と平太君の前へ庇うように出る

｢亜月さん！！｣

｢まさかお前の方からやってきてくれるとはな、桜田A｣

私たちに苦無を向ける女はニタリと笑う

暗い紺色の忍装束に身を包んでいる見知らぬ忍び…私の知り合いだろうか

もちろん覚えは無いのだが、最近偵察に来ていたのは此奴らだろうと直感で思った

｢亜月さん逃げてください！｣

後ろからしんベヱ君が叫ぶ

｢出来るわけないでしょ！｣

相手から目は離さぬまま足元にあった苦無を素早く拾う

正直、武器を持っても今の私では無駄だ

それでも、なんとしてでも、この子達を守って助けなければ

思考を巡らせていると男が口を開いた

｢お前がAとしての記憶を失っていることは分かっているんだ、大人しく従いな。もし変に動けば…分かっているな｣

そう言って苦無を持った手が動く

苦無の先が喜三太君の首に食い込み、一本の紅い筋が流れるのが見えた

喜三太君が痛みで顔を歪ませる

｢…あ｣

突然体が熱くなった

この感覚、知っている

この恐怖も、怒りも、焦りも、不安も

…目の前の憎たらしい紺色も