…良い天気だなぁ ページ1
翌朝、亜月はモヤモヤとしたまま身支度をしていた
昨日の男の顔と、小松田の話が忘れられなかったのだ
(もし本当に私が狙いだとしたら、きっと学園にも被害が出てしまう…)
昨日、小松田の話を聞いて嫌な予感がした亜月は直ぐに学園長の元へと報告へ行った
｢ふむ、不審な人物が毎日やってくるとな｣
｢はい、先程来ていた男は私と目が会った途端不気味な笑顔を浮かべて去って行きました。恐らく、私が目的だったのかと…｣
学園長は1口お茶を啜った
｢後ほど先生達には説明をしておこう。警戒を強めてもらうから、桜田くんは安心して過ごすのじゃ｣
｢…ありがとうございます｣
亜月の中にあるモヤモヤとした不安、焦りは拭えないまま、両手を着いて頭を下げた
.
髪をとかしながら戸を開けると、心情とは対照的に雲一つない青空
亜月が学園に来て数週間で、季節は夏へと移り変わった
濃い青色と湿気を含んだ暑さが、何故か不安を大きくさせる
｢…良い天気だなぁ｣
わざと明るく声に出し、亜月は体を伸ばした
.
時は過ぎ放課後
｢亜月、それをこっちに持ってきてくれないか｣
｢はーい｣
亜月は用具委員会の手伝いとして、壁の補修をしていた
留三郎にどうしても人手が必要だと頼まれ、小松田が心配ではあったが本人が大丈夫だと自信満々に言っていたので手伝うことにしたのだ
｢あ〜、水終わっちゃった〜！｣
｢僕も〜｣
｢今日は暑いし、脱水症状になってもいけないから食堂へ行って冷たい水もらって来い｣
自分の竹筒を覗き込んで声を上げたしんベヱ、喜三太、平太に、留三郎は額を流れる汗を拭きながら答えた
｢は〜い！｣
元気よく走り出す三人を見て、若いな〜、と亜月は呟く
｢丁度いいタイミングだし、俺達も休憩にしよう｣
｢そうだね｣
午後になってから気温は上昇し、体のあちこちにじんわりと汗が滲む
｢そういえば、作兵衛君も用具委員会だったんだね｣
｢なんだ、作兵衛と亜月はもう関わりがあったのか｣
留三郎が少し驚いたように言う
｢はい、昨日左門と三之助を捕まえてもらいまして…ありがとうございました｣
いえいえ、とにこやかに答える
｢一年生の三人は今日が初めてだけどね、守一郎君ももう仲良しだよ｣
ね、と同意を求めるように顔を向けると、｢はい！｣とニコニコした笑顔で返ってくる
｢そうだったのか、ならより作業がやりやすくていいな｣
留三郎は嬉しそうに笑った
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作者名：たると | 作成日時：2022年5月8日 19時
