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増える足音の怪 其の玖 ページ19

“憎い”

人形はたしかにそう呟いた

だがその口が動いた気配は無い

古ぼけた人形はスッとぎこちない動きで歩いてくる

一歩

一歩

その足を踏む出すたびに人形の中で何かが渦巻いた

何かはわからない

ただ、目の前の物が一つの個体ではないようだということが寧々にまで分かった


『憎イ』


一歩 空気が淀む


『苦シイ』


一歩 足元に大きな影が生まれる


『熱イ』


一歩 怨みの熱が三人を覆う


歩くたびに、たくさんの“何か”が人形の中で渦巻いている

そして異変は起こった

「なっ…!」

顔が沸騰したお湯のように腫れ上がり、異物が顔になり、増えていったのだ

その間に苦しげな声が幾多も聞こえ、ボコボコバキバキと嫌な音があたりを支配する

その光景に花子は慄き、寧々は声にならない小さな悲鳴を上げ、太郎は寧々を強く抱きしめる

『『生きテルもノガ憎イ』』

「…っ!」

急に聞こえたいくつもの声

それに花子は我に返る。冷や汗が頬を伝った

そして次の瞬間

『お前ハイらナイ』

いきなり飛び出てきた影によって、花子はふっ飛ばされた

突然の事で整理がつかず、「がはっ…!」という声が漏れ、動かなくなってしまう

「花子くんっ!」

その光景を見て、寧々は太郎の腕の中から飛び出した

「寧々さんっ!今行ってはだめです!!」という太郎の声が後ろからするが、寧々は一目散に花子の元へと駆け寄った

影が寧々を襲おうとした時、白杖代がそれを跳ね返し、寧々はどうにか花子の元へと辿り着く

「花子くん…っ!花子くん…っ!!」

揺すってみるも、気絶しているのか目を一向に開かない

「寧々さん!花子さんっ!後ろ!」

その声に振り向こうとしたその時

後ろで鈍い音がした

見てみると、太郎が影を抑えている

その手に血のようなものを流して

「…っ!太郎さん!」

寧々が真っ青になって声をかけると、太郎は笑って「大丈夫!」と叫んだ

「それより花子さんを…!おこし、て…うわっ…!」

ギチギチと小さなその手に影を抑えるのは簡単ではないらしい。精一杯抑えていてもズルズルとうしろに押されてしまう

それでも守ろうという意志が後ろ姿から感じ取れた 白杖代もそれに加勢する

影はまだ膨張を続け、大きくなっていった

「花子くん…っ!お願い起きて!」

べちべちと叩き、揺さぶる

それでも何かのダメージが大きかったのだろう。起きてくれない

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白夜の幻想者 - あいうえおさん» あ、そうでしたね…!ご指摘ありがとうございます…! (2019年4月7日 14時) (レス) id: 55b7b486eb (このIDを非表示/違反報告)
あいうえお - 花子くんはヤコさんのこと「二番」って言っていたような気がします (2019年4月7日 0時) (レス) id: 297e0956e6 (このIDを非表示/違反報告)
白夜の幻想者 - 透空さん» えと、ごめんなさい…いろいろあって一個だけしか更新できなかったです…今はどうにか一段落したのでそちらも続けられます…! (2019年3月4日 7時) (レス) id: 55b7b486eb (このIDを非表示/違反報告)
透空(プロフ) - ごめんなさい、突然…。合作のことなのですが、続けられますか?私はどちらでも良いので白夜さんが決めて頂ければと思いまして…。少し考えて頂けたら嬉しいです。 (2019年3月2日 13時) (レス) id: 3bf9f61dac (このIDを非表示/違反報告)
白夜の幻想者 - 最近ネタが浮かばないこの頃です。更新が全然進まず申し訳ありません! (2019年2月16日 11時) (レス) id: 55b7b486eb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:白夜の幻想者 | 作者ホームページ: ないよー  
作成日時:2018年9月25日 22時

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