ページ ページ16
*
【佐久間 side】
｢もっと、自分に素直になって｣
｢…………………ｯ……、ｯﾌ……ッ……｣
その言葉と共に我慢していた涙が溢れ出した。直ぐに止むなんて事は全くなくて、困惑と恥ずかしさから腕で目を隠す。今、きっと誰よりも酷い顔をしている自覚があった。
すると、腕を退けられたと同時に上半身が浮遊する感覚が訪れる。気付いた時には起き上がるような形で誰かから抱きしめられていた。未だに涙は止まることはないけれど、その温もりと香りで一瞬にしてわかってしまう。
｢……ひ、……っかる……｣
｢本当にごめんな、佐久間｣
__たった一言。
たった一言の言葉だったのに心の中で我慢していたものが溢れる。岩本の方に顔を疼くめ、彼の服を握り締めて泣き始めた。周囲には年下しかおらず、情ない姿かもしれないけど今日だけは許して欲しい。
｢辛、かったぁ……体は、重いし……仕事で、はっ、……みん、な、の、足引っ張って、ダメダメで。ここに、いちゃ、だ、めなんだって……｣
久々に出た負の言葉。6人から9人になり、年下が増えたことによってお兄さんポジションへと変わった。前までなら言えていた言葉も言いづらくなって、知らない間に俺は誰にも本音を言えなくなっていたのだ。
｢そんな事ない。さっくんのダンスもアクロバットも、優しさも笑顔も明るさも全部必要｣
｢いつも佐久間君に元気もらってるんです｣
｢佐久間がいてくれるから俺らは笑えるんだよ。ここにいる3人以外もみんなそう思ってる。だから、もっと自分に自信もって｣
3人の優しい声に涙が止まらない。ずっと、この状態でいる事が無意識に怖かったんだと思う。壊れ物を扱うかのように撫でられる頭。俺の呼吸を整えるために一定のリズムで叩かれる背中。その全てが今の俺には優し過ぎて涙を止めることが出来なかった。
｢ねぇ……、ひかっ、る。しょう、った。め、めっ……｣
頭はまだ痛いし、熱だって計らなくてもわかるくらい高い。倦怠感も消えなくて、しばらくは大人しくしないといけない。けれど、そんな状態でも今はこの言葉を伝えたかった。
__この部屋に居ない、他のメンバーも含めて。
｢ありが、と｣
今できる最高の笑顔で感謝の言葉を述べる。ここにいるメンバーには、傷ついた時も確かにあったけれど助けられた。目の前の3人の顔が、今日初めて優しく、でも、俺の大好きな笑顔へと変わった。
*
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 244人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「SnowMan」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
yuki(プロフ) - はじめまして。リクエストお願いしたいです。翔太くんが個人仕事多忙により過労で倒れるも、引き続き無理を続け、結果、肺炎と過労、栄養失調で入院。翔太くんの体調不良を見て見ぬふりしていた舘さまが我を忘れて動揺する的な話をお願いします。 (2020年9月15日 16時) (
レス) id: 3f1312ed68 (このIDを非表示/違反報告)
ひらめ - リクエストお願いします康二くんが過労から過呼吸で倒れ、舘様とひかる君が看病、話を聞いてあげるのをお願いします！ (2020年3月19日 21時) (レス) id: 579ffd5296 (このIDを非表示/違反報告)
さくさく - 楽しみにみてます。阿部くん喘息みたいです。お時間があればお願いします (2020年3月18日 12時) (レス) id: 137beba8ce (このIDを非表示/違反報告)
ドリチャ(プロフ) - 発作の対応を舘さんが慣れているからやってくれるっていうのも入れて欲しいです！よろしくお願いします！ (2020年3月9日 4時) (レス) id: 4c61a442d0 (このIDを非表示/違反報告)
ドリチャ(プロフ) - リクエストいいですか？翔太くんが子供の頃心臓病を患っていて今も激しい運動は少し気をつけないと行けない状況で、番組でマラソンをすることになってみんなが心配する中ちゃんとやるけど最後に発作が起きちゃうものがみたいです！ (2020年3月9日 4時) (レス) id: 4c61a442d0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：棗 | 作成日時：2020年2月23日 21時
