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カリカリとペンが走る音が止まった。
「確認してくれ。これで最後だ。」
そのまま書類を受け取ったAは、静かに目を通して始めた。
その伏せられた目の、色素の薄い長いまつ毛が、その奥のペリドットを良く飾る。
形のいい唇が少し色づいていて、キメの細かい白い肌が際立たせた。

「(あー、キスしたいなぁ。)」

既に手持ち無沙汰になったスティーブンは、彼女の端整な顔を見て、ついそう思ってしまう。判子を押す所作でさえも、スティーブンの目を離さなかった。
Aが視線を上げ、確認し終えた書類を蔵うと、ふふ、と可笑しそうに笑った。

「貴方が考えてること、筒抜けよ。
Good boy,仕事が終わるまで待てるわね?」

そう言われた瞬間、真っ赤になったスティーブンは、書類で顔を隠してしまった。

「いつでも心を読まれてると心得ていた方がよくってよ?それに、顔を隠したって、私には何となくわかるから無駄な行為ね。」

スティーブンはパサリと書類を机に置く。

「...さっき、2人の事を名前で呼んだだろ。仕事中では俺のことを、傷男って呼ぶのになぁ。」

「嫉妬しているの?大人気ないわ。彼らは私よりも先輩だけれど、私の方が年上なのよ。甘やかして何が悪いの。」

するりとスティーブンの指先が、Aの指先に絡みつき、指遊びをしているのかのように、何度も指を絡め合う。

「俺のことは、名前で呼んでくれないんだな?
前も言ったろ。嫉妬深い男だって。もし、あの2人を氷漬けにしてしまったら、どうしてくれるんだい。」
Aの空いた手が、スティーブンの頰を優しく撫でた。
「ふふ、それは困るわね。ドモヴォーイに何て言うつもりなのかしら。」
「正直に言うさ。君が俺を妬かせるから、こうなったんだって。」
2人の間が徐々に狭くなり、お互いの鼻先が当たりそうである。

「どうしたら、回避できるのかしら?」

「君がキスしてくれたら」

If you say so(貴方がそう言うなら)...」








事務所内が甘い雰囲気に飲み込まれた時、買い物組がドアの外で気まずそうに待機している事など、2人は知らない。

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9t9 - 血界戦線大好きのスティーブン推しで貴方の作品を見つけました。本当にこの作品が大好きです!ツェッドさんとか出てきたら絡みがどうなるのかとかも楽しみだし単純にこの先の物語が楽しみでなりません!!更新が止まっていらっしゃるようですがずっと待ってます! (2022年10月19日 16時) (レス) @page38 id: f8f6fc2c71 (このIDを非表示/違反報告)
ひゃぼ(プロフ) - いつまでもお待ちしております...!!! (2021年8月28日 1時) (レス) id: 4c0d27bb14 (このIDを非表示/違反報告)
アリア - 初コメ失礼します。一人称は使い分ける方が良いと思います。ちょっとしたことですがこれだけで表現の幅がだいぶ違うと思うからです (2017年10月30日 19時) (レス) id: 5884d91fd1 (このIDを非表示/違反報告)
Rin(プロフ) - メヌエットさん» コメントありがとうございます。面白いと感じて頂けて嬉しいです! (2017年10月30日 1時) (レス) id: 409b7a99fe (このIDを非表示/違反報告)
Rin(プロフ) - nana☆さん» アンケート回答ありがとうございます!更新頑張りますね。 (2017年10月30日 1時) (レス) id: 409b7a99fe (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Rin | 作成日時:2017年10月23日 8時

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