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中で瀕死のスティーブンがもがいていたのだ。さっきまで、うんともすんとも言わない人形みたいだったスティーブンが、目を見開き、足をバタつかせ、首に手を回している。
「Aさん！早くスティーブンさんを出して！！溺れ死ぬ！！」
レオナルドが言うも、Aは変わらず水塊に目を向けたままだ。
だめだ、この人は気をやってしまったんだ。とレオナルドは思った。自分の旦那がもがき苦しむ様子を見て何もしないなんて。
こうなったら視界混合させて、気絶でも何でもさせなければ。とレオナルドが考えた時だった。
「おい陰. 毛頭！番頭の指が！！」
え、とレオナルドが声を上げてスティーブンを見ると、無くなったはずの指がある。
折れた脚は真っ直ぐになり、風穴は綺麗に無くなっていた。あれ程苦しんだスティーブンは、眠ったように静かになり、ばしゃ、と体を包み込んでいた水が流れ落ちた。
そのまま体は地面に激突する事なく、何処からか湧いた水によってキャッチされる。
今の今まで死にかけだった上司が、こんなにも綺麗に治ってしまった状況に、レオナルドとザップは付いていけない。
「どういう事だ。何で番頭は治った。」
ザップの声には、歓喜、安堵、困惑、懐疑が入り混じっていた。正直言って、そのままあの状態から助かる可能性は殆ど皆無だった。
背中で感じた弱まっていくスティーブンの鼓動が、彼が着実に死に向かっている事を雄弁に語っていたのだ。
しかし、Aは救急車が到着しても何も答えなかった。担架に乗せられるスティーブンを視線だけで見送り、その付き添いにと後から車で向かったクラウスが去り、ザップとチェインが去った後も涙をひとつ流すだけだった。
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辺りに再び喧騒が戻った頃、まだ隣に残っていたレオナルドは、まだぼんやりと同じ方向を見続けるAに声を掛けた。
「Aさん。スティーブンさんは、大丈夫っすよ。」
その声にハッとしたように、Aがレオナルドに顔を向けた。綺麗な顔は、泣いてしまって真っ赤に腫れて随分痛々しい。
「レオナルド君、以前彼は私に全て捧げると言ったわ。」
「うわぁ、情熱的っすね。」
「ええ、私もそう思う。...レオナルド君、私のことを恨んでも呪ってもいいわよ。」
「えっ、藪から棒に一体何を言ってんすか...」
「さっきスティーブンを殺したの。」
そう言ったAの顔は、余りにも綺麗で、そして深く悲しそうに笑っていた。
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9t9 - 血界戦線大好きのスティーブン推しで貴方の作品を見つけました。本当にこの作品が大好きです！ツェッドさんとか出てきたら絡みがどうなるのかとかも楽しみだし単純にこの先の物語が楽しみでなりません！！更新が止まっていらっしゃるようですがずっと待ってます！ (2022年10月19日 16時) (
レス) @page38 id: f8f6fc2c71 (このIDを非表示/違反報告)
ひゃぼ(プロフ) - いつまでもお待ちしております...！！！ (2021年8月28日 1時) (レス) id: 4c0d27bb14 (このIDを非表示/違反報告)
アリア - 初コメ失礼します。一人称は使い分ける方が良いと思います。ちょっとしたことですがこれだけで表現の幅がだいぶ違うと思うからです (2017年10月30日 19時) (レス) id: 5884d91fd1 (このIDを非表示/違反報告)
Rin(プロフ) - メヌエットさん» コメントありがとうございます。面白いと感じて頂けて嬉しいです！ (2017年10月30日 1時) (レス) id: 409b7a99fe (このIDを非表示/違反報告)
Rin(プロフ) - nana☆さん» アンケート回答ありがとうございます！更新頑張りますね。 (2017年10月30日 1時) (レス) id: 409b7a99fe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Rin | 作成日時：2017年10月23日 8時
