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水膜を展開する作業はかなりキツイものがある。戦闘よりは幾分マシだが、野次馬が巻き込まれないように隠す水は、余計に彼らの好奇心を刺激して、一面に広がる滝の様な壁に穴を開けようとありとあらゆる手を使って入ろうとするのだ。
以前、まさに今の様な状況でAは一体の異界人の頭を飛ばしたことがある。
仕方がなかったのだ。水では流石にロケットランチャーは止められない。水壁が爆散し、待ってましたとばかりに入ってきた1人の野次馬。
その時のAは、言われた任務を確実に遂行しようと躍起になっていた。
気がついたら異界人の頭が宙に浮いていた。
「あ」とAが出す頃には、頭部と永遠におさらばした胴体が、べしゃり、と濡れた地面に力無く倒れた。
「絶対中に誰も入れるな。」とスティーブンに言われた事を、Aは部下として忠実に守ったに過ぎない。ただ、呆気なさすぎたのだ。異界人の頭が飛ぶ様が。
任務は滞りなく終結を迎え、死守した廃ビルからスティーブンが出てきた。
相当気に障ることがあったのだろう、彼の眼光は鋭い殺気を帯びていて、ギミックが施された革靴は血濡れていた。
「あ、お疲れ様。」
しかしそれはAの姿を捉えると直ぐになりを潜め、ふにゃりと破顔した。壁に囲われた中だから、家にいるように彼は笑った。
Aは笑えなかった。お疲れ様、の一言も返せなかった。Aは一度たりとも命を奪った事が無いわけではない。それなのに、心の隙間に裂けた溝が、深く、深く、広がって行く。こんな姿を見て欲しく無い。拡大する溝がAの中身を晒すようだ。流れ落ちた涙にさえも気づかない程に放心していた。
「A」
突然体が逞しい腕に収まる。いつの間に近くまで来て来ていたのか分からない。ダークスーツから血とオーデコロンが鼻腔をくすぐる。
「お疲れ様、帰ったらコーヒーを淹れてあげる。よく頑張った。」
仕事中には言わない名前呼び。甘いムスクの香り。頭を撫でる大きな手。
「私、気付いたら、彼を殺しちゃって...」
「君は悪くない。彼は運が悪かった、それだけだ。アレは部下に片付けさせよう。君は完璧に任務を遂行した。大丈夫。」
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つい二週間前の出来事だ。
あんな不意打ちは二度と御免だ、と攻撃された箇所を補強しつつAは笑う。
帰ったら、またスティーブンにコーヒーを淹れてもらおう。紅茶はからっきしだが、カフェイン中毒の彼のコーヒーは一級品なのだ。
「早く帰って来て...。」
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9t9 - 血界戦線大好きのスティーブン推しで貴方の作品を見つけました。本当にこの作品が大好きです！ツェッドさんとか出てきたら絡みがどうなるのかとかも楽しみだし単純にこの先の物語が楽しみでなりません！！更新が止まっていらっしゃるようですがずっと待ってます！ (2022年10月19日 16時) (
レス) @page38 id: f8f6fc2c71 (このIDを非表示/違反報告)
ひゃぼ(プロフ) - いつまでもお待ちしております...！！！ (2021年8月28日 1時) (レス) id: 4c0d27bb14 (このIDを非表示/違反報告)
アリア - 初コメ失礼します。一人称は使い分ける方が良いと思います。ちょっとしたことですがこれだけで表現の幅がだいぶ違うと思うからです (2017年10月30日 19時) (レス) id: 5884d91fd1 (このIDを非表示/違反報告)
Rin(プロフ) - メヌエットさん» コメントありがとうございます。面白いと感じて頂けて嬉しいです！ (2017年10月30日 1時) (レス) id: 409b7a99fe (このIDを非表示/違反報告)
Rin(プロフ) - nana☆さん» アンケート回答ありがとうございます！更新頑張りますね。 (2017年10月30日 1時) (レス) id: 409b7a99fe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Rin | 作成日時：2017年10月23日 8時
