千夜一夜物語《短編》 (ページ7)

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のページ7

うつむいて鼻をすする。
大きな手が両頬を包んで、親指が優しく涙を拭った。

「泣かないで、A。Aの願いならなんでも叶えてあげるから」

あんまり優しく触れるから涙がどんどん溢れてきて、トモーニャがおろおろしてる。

「彼氏に戻ってきてほしいの？」

「ううん、ちがうの」

「じゃあ、どうして」

「とびきりの美人になって、和真の前でこれみよがしにイケメンといちゃいちゃしてやる！振ったこと後悔させてやる！」

「イケメン？」

「そう、かっこいい男の子のこと。そうだ！トモーニャ、私の彼氏のフリしてよ！それが2つ目のお願い。」

「ぼくでいいの？」

「うん！トモーニャ、イケメンだよ！すっごくカッコイイ！」

照れくさそうに笑うと人差し指をぴん！と立てて、私にに向ける。

「じゃ、そうと決まれば、えい！」

ボワん！

トモーニャが出てきたときみたいな煙が私を包む。

肩を押されて鏡の前に立つ。

これ、本当に私？

全くの別人になっちゃうのかと思ってたけど私だとわかる。それなのにすごく、

「キレイ…」

「でしょ？」

「うん！トモーニャすごい！天才！」

「えへへ、じゃあ次はぼくも。えい！」

ボワん！