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11 Side T ページ42

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出張から帰ってくるAのお迎えに行こう。

帰りの新幹線の時間を聞いたときからそう決めてた。
Aがよく似合うと買ってくれた服を着て、予想時刻の少し前には最寄り駅についた。

いつもの場所に座り込んでると、遠くから俺の名前を呼ぶ声。

「倫也ー、会いたかった!」

よく話しかけてくる女。
名前は聞いたけど忘れた。目線だけちらりとやって何も答えずにいると、そんなことには気にもとめず俺の隣に座る。

「今日もお迎え?」
「まあ」
「…あのお姉さんと倫也ってどういう関係なの?」
「言う必要ある?」

今度は視線も合わせず答えるけど、その子はそれも意に介さない様子で、興味のない話しを続けてる。

「悪いんだけど」
「なになに?」
「あっち行ってくれる?」

こういうのAに見られたくない。Aはヤキモチやくどころか、遠慮して先に帰ったりしちゃいそう。

俺の冷たい態度なんて気にならないのか、じゃあと立ち上がる。

「私たち、このクラブにいるから暇になったらおいでよ」

体育座りしてる俺の膝の上にフライヤーを置いて離れていった。

その後すぐに改札の向こう側にAの姿を見つけて、フライヤーを手に慌ててた立ち上がる。

「Aー、」

駆け寄ろうとしたとき、Aの前を歩いてた男が振り返り、Aは抱きつくようにぶつかった。こっちからは見えないAの顔。

何あいつ、足が止まる。

何を話してるのか、まるでキスでもするみたいに男が顔を傾け近づける。

A、だれそいつ?

顔を上げたAと目がぱちんとあった。

その男も振り返って俺をみる。
仕事してました!って感じのスーツ姿で並ぶ2人。ふと自分の服装を見れば、ゆるーい柄シャツに太めのパンツと社会人には見えない。童顔も相まって下手したら学生に見えるかも。


声は聞こえない。
でもAの顔が困ってる。こんなのと知り合いだとAに迷惑をかけるのかもしれない。

何も言わずに、くるりとAとは反対方向へ歩き出すとすぐ角を曲がって路地裏に入るとずるずると壁に背を預けて座り込んだ。

あれだ会社の後輩。イクタクン。
俺の知らないところでAは他の男とそういうことになったりする。こんなにそばにいてもいつまでたっても俺を男としては見ない。

目に入ったのは手に握りしめてた、さっきのフライヤー。

最近飲んでないし、このモヤモヤを消せるならそれもいいかと、そこに書いてある落書きみたいな地図を頼りに歩き出した。

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作成日時:2019年5月30日 19時

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