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いつもの仕事帰り、電車から降りる。

一日働いてふらふらの足にハイヒール。
人に流されながら改札を出た。

タクシーやバスの列に並ぶ人の波から外れたところで、壁にもたれてちょこんとしゃがみこんだ倫也がいた。
 

「倫也?」

声をかけると私の顔を見て、ぱあっ!と顔が明るくなる。

「A!おかえり!」
「どうしたの?」
「Aのお迎えにきた」
「…もしかして、心配してくれたの?」


倫也は、何も答えずにニッコリ笑うと立ち上がった。


「A、お家かえろ」


出された手。
そこに自然と手を乗せて
大通り沿いを二人手を繋いで歩く。


今日のご飯はねぇ、とか
テレビでこんなのやってて!とか
昨日こんな暗い公園通ったの?とか


笑ったり怒ったり倫也の表情は忙しい。

「Aは?」
「ん?」
「Aはどんな一日だった?」
「えー…いつもと変わらないよ。バタバタ走り回って、それ以外はずーっとパソコンにはりついて…」

ああ、目がショボショボする。
早くコンタクトはずしたい。

「そっかぁお仕事お疲れ様」
「ありがとう。倫也もお疲れ様」

「しごと…。僕も仕事する!そーだよ!そしたらAも少しは休めるよね!早く帰ってこれるようになる?」

「ふふふ」


ただ忙しい時期なだけで、別に生活が苦しいわけじゃないんだけど、なんだかやる気に満ち溢れてるから水はささないでおこう。


最近残業続きで、ちょっと寂しそうだったもんな…。

朝も、「何時に終わる?」「今日は早い?」と、まるで足にまとわりつく犬みたいだったし。

仕事すれば世界も広がるし、倫也の気分も紛れていいかもしれない。


「オレってば天才かもー!」


つないだ手をぶんぶん揺らしながら歩く帰り道は、いつもなら退屈で遠いのにあっという間。


魔法は使えなくても、倫也はいつも私の心を軽くしてくれる。
いっぱいいっぱいになってる私を救い出してくれる。



「ありがとね、倫也」

小さく呟いた声は倫也には聞こえてなくて、


繋いだ手をぎゅっ、てすると

倫也が、ん?て振り返る。

「足疲れた?おんぶする?」
「しなくていい!」
「なんで?Aなんてよゆー。軽いもん」
「軽くない!てか重さの問題じゃないし」


あははは!って大きな口を開けて笑う

楽しそうな倫也が見れたことが

今日一番のいいことかな。

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作成日時:2019年5月30日 19時

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