youth 26 ページ26
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樹「...なるほどね、それであの公園で泣いてたってわけだ」
「...はい、そうです」
何故私はさっき好きだと言われたばかりの田中先輩に、こんなことを相談しているのだろう。
傍から見れば、わりと残酷なことをしているんじゃないのかと思う。
樹「1回ちゃんと話してみたら?」
「そんな勇気、私にはありません」
樹「じゃあ、毎日1人で泣くつもり?」
...ぐうの音も出ない。
確かに、何も行動を起こさなければ、この状況に毎日苦しむのは目に見えている。
思考を張り巡らせながら歩いていたら、あっという間に私の家の前に着いた。
「私の家、ここです」
樹「お、そっか」
「送ってくださってありがとうございました」
樹「こんな遅くまで付き合わせたのは俺だしね」
田中先輩は、優しい。
田中先輩を最低だと思っていた自分が1番最低だった。
「それじゃ、また」
樹「連絡してくれたら、いつでも話聞くから」
それは大変ありがたい。
ありがたい、けど...爆モテな田中先輩に恋愛相談なんて、とてもじゃないけど恐れ多い。
樹「じゃね、おやすみ」
「はい、おやすみなさい」
満足気な顔をして田中先輩は帰路についた。
そんな田中先輩と入れ違うように、暗闇から見覚えのある人影。
暗いからちゃんとは見えなかったけど、2人ともすれ違う時に一瞬立ち止まった気がした。
慎「あいつ、こんなとこで何してんの?」
「慎太郎、」
慎「まさか一緒にいたわけじゃないよな」
登場するなり眉間に皺を寄せて、まくしたてるように言葉を紡ぐ。
何をそんなにピリピリしてるの?
自分はさっきまで彼女と一緒にいたくせに。
「...一緒にいたけど、それが慎太郎に関係あるの?」
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作者名:姫野 | 作成日時:2022年9月3日 22時