youth 24 ページ24
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樹「それで、Aちゃんには慎太郎っていう幼なじみがいるって聞いて...」
「...はい」
樹「ジェシーから2人のこと色々聞いてたらさ、あーこれ俺勝ち目ねえじゃんって」
初めて見る、田中先輩の弱気な姿。
ここ最近起こっていた出来事は、私が思っていた何倍も複雑だった。
樹「だから...なんの言い訳にもならないかもしれないけど、ああやって嫌いになってもらおうとした」
「そんな、...」
樹「あの時本当は、一方的に告白されてただけだったんだ」
あの時、って、私がキスを目撃したときのことだよね。
田中先輩は今、誠意をもって私に全てを話そうとしてくれてるんだ。
樹「だけど、向かいの校舎にAちゃんの姿が見えて、
もしかしたら、嫌いになってもらうチャンスかも、って」
「それで、キスを...？」
樹「実際にはしてないよ、Aちゃんからは角度的にそう見えただけ」
驚きと混乱で、思わず俯く。
傷つけられたと思っていたけど、実際は私が田中先輩を傷つけていたのかな。
「...ごめん、なさい」
樹「Aちゃんが謝る必要ないよ。自分勝手なことしたのは俺だから」
「楽しかったです、一緒にクレープ食べたとき」
最低だと思っていた田中先輩は、誰よりも思いやりがある人だったんだ。
この期に及んで1番最低なのは、間違いなく私だ。
樹「今さら付き合ってほしいなんて言わない。
だけど、Aちゃんの幸せを応援することくらいは許してほしい」
さっきまで引いていた涙が、また頬を伝って
足元の砂に小さな染みを作った。
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作者名：姫野
| 作成日時：2022年9月3日 22時
